登場人物の語る言葉の素直さ(嘘・偽りのなさ)が心地よく、そこに数式の美しさが溶け込んで品の良さを感じることができる作品でした。
完全数、28、江夏の背番号。
約数を足すと、その数になるのが完全数: 28 = 1 + 2 + 4 + 7 + 14
連続した自然数の和で表すことができる: 28 = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 (本当だ、美しい!)
素数、11、村山の背番号。
偶数である素数は2だけ。
2以外の素数は 4n + 1 か 4n - 1 のどちらかで表すことができる: 11 = 4 * 3 - 1
前者(4n + 1)なら2つの二乗の和で表せる: 13 = 4 * 3 + 1 = 2² + 3² (これも美しい!)
私は数学も好きなので、博士の語る数式の説明に過剰に反応してしまった。
阪神ファンの博士が集めた野球カードが大切に保管されているくだりを読んで、野球好きな私も収集していた野球カードを何年かぶりに取り出しました。
気が付けばルートが博士に喜んでもらおうと一所懸命に江夏のレアカードを探したように、西武ライオンズを応援している同じ職場のお嬢さんが喜びそうなカードはないかと思いながら見直していました。
数学と野球が好きな人には絶好の作品ですね。
最後まで分からなかったのは、ルートを守るために博士が書いた数式の意味。
その数式は 《 e^(πi) + 1 = 0 》 オイラーの等式(本書ではオイラーの公式と言っている)。
√を守る?ための式。
ルートに関係あるのは 虚数の i (= √-1)だ。
どこかで謎解きがあることを期待するも、最後まで説明されず意味不明でこれだけモヤモヤが残りました。
ただ、博士が最も美しいと感じ愛した数式が《 e^(πi) + 1 = 0 》であり、義姉は確実にその意味することを知っていたということ。
「博士の愛した数式」が言わんとしていることは、読者がそれぞれ自由に考えてみればいいということなのでしょう。
《 e^(πi) = -1 》としなかったのは、0 が必要だったからと想像します。
作品の中で0の発見や0の意味について語っている場面がありますので、間違いないかと思います。
0 は、ゼロであると同時に"円・輪"の意味を持たせようとしたのだと考えると、なんとなく分かったような気になります。
- 感想投稿日 : 2021年2月27日
- 読了日 : 2021年2月27日
- 本棚登録日 : 2019年11月18日
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