本を読む本 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1997年10月9日発売)
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本棚登録 : 7800
感想 : 718
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アメリカで1940年に刊行されて以来、長年に渡り世界中で読み継がれてきた、本を読む方法について語る本。
「本を読もう」ではなく「このように読みなさい」という、非常に合理的な学びの本だ。
読書術、読書法というものが世に席巻するが、一読の価値は大いにあり。
もしも過去に、読み切れなくて放置した本があるのならその原因が分かるだろう。
(ワタクシはそうでした)
述べられた通りに実行するのは容易ではない。
ひとつでもふたつでも自分に出来ることからやれば、それでOKかと。
その後、次の段階にあがれば良いだけのことだから。

先ず、受け身の行為と思われがちな読書を「積極的な行為」として捉えている。
そして初歩的なレベルからより高いレベルへと上がれるように、懇切丁寧に解説している。
新しいレベルに行くたびに、前章までで学んだことを再確認してくれるという親切さも。
学校に通う間は教師に頼れるが、卒業後の学びには読書が欠かせない。
そこでどうしても読書の技法が必要になって来る。
何のために読むのかという目的さえ分かっていれば、その目的にあった読み方があるという。その読み方の指南書だ。

「初級読書」と「点検読書」、そして「分析読書」と続く。
最終的には「シントピカル読書」というレベルを目指すのだが、本書で特にページを割いてるのは「分析読書」の部分。そこを箇条書きにしてみる。

1.第一段階 何についての本であるか見分ける
2.第二段階 内容を解釈する
3.第三段階 知識は伝達されたか
 A 知的エチケットの一般的心得
 B 批判に関して特に注意すべき事項

箇条書きにもほどがあるというものだ。
1については、分類の仕方から解説。分類のためのカテゴリーがこちらの頭に入っていなければならない。大丈夫、ちゃんと書いてあるから。
2は、何がどのように述べられているかを見つけること。
キーワードや重要語を見つけ、著者の言わんとしていることを短くまとめてみる。
3は、前2つが終わらないうちは批評にとりかかってはならないということ。
そして、本に書かれたことが真実かどうか、それにどんな意義があるかを考える。

理想的な読書に近づくには、たくさんの本の上辺だけをかじるのではなく、一冊でも良いからこの規則を守ってよく読むことが大切。
ただ、熟読するに値する本も数多くあるが、それにもまして「点検読書」にとどめるべきものの方がずっと多い。
本当の意味ですぐれた読書家になるには、それぞれの本にふさわしい読み方を見つけ、読書の技術を使い分けるコツを体得すること。それが著者の述べるところだ。

そして、「文学の読み方」は、「分析読書」のあと別の章で解説されている。
実は、ここはかなり笑えた。
笑わせる目的などないはずだが、著者の解説だとこうなるのかと眼からウロコ。
そうか、文学も積極的に読むべきなのね。
面白く読めればそれでいいじゃないかと思われるでしょ?ええ、確かに。
ところが読んでみると、それだけじゃなかったと気が付く。
何しろこの本自体が読みやすくて面白いのだから。
私は「点検読書」を先ず身につけて、選書眼を磨きたい。
著者の高い品性を感じるかなりお役立ちの一冊。全ての本好きさんへぜひ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本:愛書家のためのベスト10
感想投稿日 : 2020年5月21日
読了日 : 2020年5月20日
本棚登録日 : 2020年5月21日

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コメント 6件

まことさんのコメント
2020/05/22

nejidonさん♪こんにちは。

最近、nejidonさんの読まれていらっしゃる本が、私の家の本棚とかなりだぶってみえます。
ただし、私は積読がかなり多いですが…。
『読んでいない本について堂々と語る方法』
『絵本を抱えて部屋のすみへ』
そして、この『本を読む本』。
全部積んでます。『本を読む本』は買ったはいいのですが、中身をみたら、なんか学術的でつまらなそう…。と思ってしまいましたが、nejidonさんがレビューされると、こんなに面白そうな本に早変わりしてしまうのですね。読んでみようかと思いました。(レビューはとてもできなさそうですが)
『本を遊ぶ』『新書がベスト』などは、既読本で、あまりにも、読書傾向が似ていたのでびっくりしました。(って積読のほうが多い私ですが)
『二度読んだ本を三度読む』ではnejidonさんにコメントをいただき『イギリス人の患者』を読んだのがよい思い出です。
よくわからない、コメントですいません(^^;
『読んでいない本について堂々と語る方法』も読んでみたいとは、思っているのですが、中々読めないでいる本ばかりです。

nejidonさんのコメント
2020/05/22

まことさん、こんにちは(^^♪ コメントありがとうございます。
いやぁ、面白いですね!
私はまことさんの積読本&既読本をレビューしていたのですか・笑
私のレビューで読みたい気が失せたなんてことがありませんように。
そして、私もよくそういうことありますよ。
(特に小飼さんの本は既読&レビュー無しの方が多くて驚きました)
積読本ばかり増えるって皆さんよく言われるのですが、積読本は待機している本だと私は思っています。
自分の中で「今が読み時」というタイミングが来たら、とても面白く読めるし理解もすすむのではないでしょうか。
疲れたら休めばいいし、ムリして載せるものでもない。お仕事ではないのですから(^^;
私は読んだ内容を頭の中でまとめながら読み進む作業が好きなのです。
なので、こういった本の方が読みやすく感じます。
ぜひ、「本が自分を呼ぶ」タイミングで楽しく読まれますように。
きっとM・オンダーチェの本に出会った時のような感動を得られるのではと。
どうか、そうでありますように!

まことさんのコメント
2020/05/22

nejidonさん♪

返信ありがとうございます(*^^*)
nejidonさんのレビューを拝見して、読みたくなくなったなんて、ありません。
逆です。
nejidonさんのレビューを拝見すると、すごく面白そうに書かれているのですが、今、手元に『読んでいない本について堂々と語る方法』と『本を読む本』持ってきてみたのですが、やっぱり私は眠くなりそうな気がします…(^^;
じっくり読めば、面白そうな気もしますが。
私に理解できるのかという問題もあって、理解できないままレビューはむずかしいと思いますが。
時間があるときに読みたいです。
『本を読む本は』、図書館が休館中だったので、こういうちょっと難しそうな本にもチャレンジしてみようかと思って、最近、私も本棚から取って手元に置いていました。
でも、また来週から、図書館が開館するので、そちらの本を先に読むのでおあずけです。
小飼さんの本は、私も楽しく読みましたが、まだ、ブクログに登録していなかったので、レビューしていないだけです。
M・オンダーチェの本は、昨年度読んだ本の私のベスト1だと思っています。
出会いをありがとうございました!

nejidonさんのコメント
2020/05/22

まことさん、再訪して下さってありがとうございます!
ああ、良かったです。
私のレビューが読みたい意欲を削いでしまったらどうしようかと思いました。
以前にもお話したことがありますが「読んでみたい」「読んだよ」と言われるのが一番嬉しいものです。
なので、レビューも極力そう思ってもらえるように載せています。

この本も「読んでない本について・・」も、たぶん一気読みですよ。
それほど面白くて、途中でやめられないと思います。
じっくり時間をかけたら、むしろ集中力が途切れそうで心配です。

まことさんの本棚に絵本や児童書がないように、私の本棚にも文章術や流行りの小説はありません。これはずっと変わらないことでしょう。違いがあるって楽しいですね(*^^)v
無理せず、楽しみながら読んで参りましょう(^^♪
本はいつでも待っていてくれますから!

yhyby940さんのコメント
2020/07/15

こんばんは。読書家を志す者(表現的におかしいかもしれませんが)にとって、バイブル的な本ですよね。ずいぶん昔に読んだんですが、私の読解力不足ゆえ、理解できないところが多々あったように記憶しております。もう一度読み返してみようと思いました。ありがとうございます。

nejidonさんのコメント
2020/07/15

yhyby940さん、コメントありがとうございます。
おお、この本はそういう立ち位置だったのですか!知りませんでした。
読みたくて読んで、そしてたまたま面白かった、というレビューです。
読み返してみると違う見方が出てくるかもしれませんね。
私も読み返してちゃんと味わいたい本がたくさんあります。本て、いいですよね。
こちらこそ、ありがとうございました。

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