スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年1月15日発売)
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感想 : 1265
3

「かがみの孤城」以来の、辻村作品。
自分からは決して選ばない本だが、お世話になっている方からのお勧めで読んでみた。

難しいところは一切ないので、さくさくと進める。
ただ困ったことに、登場人物たちにあまり魅力を感じない。
スロウハイツの住人たちは皆、オーナーの「赤羽環」も含めてクリエイターと呼ばれる人たちだ。強い自意識の固まりで、自分こそ特別だと思い込んでいる人たち。
特に「赤羽環」はそれが強烈だ。
彼女の「男が」「男と」という物言いや、相手の苗字を呼び捨てにするところなど、どうしても嫌悪感が先にたってしまう。

もっとも、だからこそのクリエイターなのだろうけれど、しかしこの共依存は何?
互いの距離が近すぎて、幼いほどの密着感だ。
個性の強い「赤羽環」が、自ら声を掛けて住まわせた住人たちなので、赤の他人通しが住む一般的なアパートとは一線を画していると、考えれば良いのか。
それとも、こんなところで躓きそうになるのは、すでに作者の術中に嵌ってしまったということか。もしそうなら実に楽しい読書になりそうなのだが、今のところ何とも言えず。

メンバーの中の誰にとって、誰が神様なのか。
上巻を読んだ時点でおおよその察しはついている。
たぶん下巻でそのいきさつが明らかにされるのだろう。
素人の私が推測した通りの流れだと失望してしまう。どうか、そのはるか上を行って欲しい。
そして「赤羽環」というキャラ設定の意味も判明すると嬉しい。

オープニングに現れる「チヨダ・コーキ」の小説に影響されたと言われる事件。
その「チヨダ・コーキ」も住んでいるスロウハイツ。
キーポイントはそこかな。
小さなエピソードも全て、巧みに回収されることを願うのみ。ということで、下巻に続く。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年9月29日
読了日 : 2019年9月29日
本棚登録日 : 2019年9月29日

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