スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

  • 8859人登録
  • 4.00評価
    • (1027)
    • (1164)
    • (768)
    • (97)
    • (26)
  • 766レビュー
著者 : 辻村深月
  • 講談社 (2010年1月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765565

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 赤羽環のような女性は、苦手だ。
    男性のことを「男」と呼び、「セックス」という言葉をあえて口にする。
    仕事はばりばりこなす(それはいい)。自分の信念に裏打ちされた正しい言葉をストレートに放ち、周りを切り刻む。
    一見さばさばしているようだが、こういう人が一番自分の女性的な部分を意識していて、関係がこじれると厄介なタイプなのだ。

    狩野荘太も長野正義も苦手だ。
    そりゃ僕も『ミツバチのささやき』も『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』も好きだが、自分たちが特別だと思っているその感じがつらい。
    そして、森永すみれ。
    じつは頑固で芯の部分で揺るがないのが彼女だと思う。最も手強い。

    タイプは違えど過剰な自意識の塊のようなスロウハイツの住人たちに居心地の悪さを覚える。
    しかしそれは、録音された自分の声を聴く時の違和感や、街なかのショーウィンドウに映った無防備な自分の姿に感じる恥ずかしさと同様のものだった。

    映画やドラマを観ていて「こいつ嫌な奴だな」と思う時は、いい脚本に力のある役者さんの魅力がばっちりはまった時だ。
    『スロウハイツ』という建物は辻村深月さん自身で、彼女の分身であるスタンスの異なるクリエイターたちが、いつも心の中でせめぎ合い、闘い、葛藤しながら作品が生み出されているんだろうなぁと、ふと思う。

    スロウハイツの住人たちが次第に気になり始め、見守りたくなってきた。彼らはどうなっていくのか。全てのカードは出揃ったのだろうか。
    辻村深月さんが華麗に裏切ってくれることを期待して下巻へ。

    (余談だが、チヨダ・コーキは西尾維新を、狩野荘太は若き日の藤子・F・不二雄先生をイメージしながら読んだ。『ダークウェル』の幹永舞と夜真下陸男も『DEATH NOTE』の大場つぐみ・小畑健コンビを想像してしまった。
    『スロウハイツ』も『トキワ荘』みたいだ、と思っていたら、そのまんま作品内で言及されていたので、僕は作者の手のひらで踊らされているのかもしれない。下巻が楽しみです。)

  • 上巻は下巻につながる序章という感じ。
    スロウハイツに住む住人たちの紹介。
    個性豊かな住人たちばかりで、なかなか面白い。
    後半に少し話が動き出し、きっと下巻では何かあるよねぇと期待を膨らませずにはいられない。
    下巻が楽しみ♫

  • 職場の先輩に薦めてもらった本。
    心が温まる話とのことだったけど、上巻を読み終わった時点では温まる兆しはない。
    どうしたことか。
    ただ、先輩はすぐに下巻を読むこと!と強調していたので、とにかく下巻まで読んでから判断せねばならない。

    ここまではなんとも不思議な小説だなという感想。
    登場人物>シナリオと言ったらおかしいだろうか。
    この小説で描きたいのはスロウハイツで起こる出来事ではなくて、そこに住む住人の関係や、嗜好や、思考ではないかと思う。
    小説家、脚本家、画家の卵、漫画家の卵、映画監督の卵と、クリエイター揃いの住人と、その間で生まれる様々な感情を切り取ることが目的ではないだろうか。
    作者の意図がそうでなかったとしても私はそこばかりが気になってしまった。

    かけがえのない友人であり、ライバル。または憧れの存在。
    人間とクリエイター、その両方の視点から評価を下しあう関係。
    実はあまり気安くないような気がして、私まで緊張してしまう。
    でも、なぜか続きが気になってすいすい読み進めてしまう。
    不思議。
    そうなんとも不思議。

    下巻で心温まる物語になったらますます分からない。
    もう、楽しみで仕方ない。

  • 現代版トキワ荘を舞台に、住人たちの詳細な人物像が浮かび上がる上巻。少々くどいくらいに描写が繰り返されるのはきっと伏線なんだな。。。

    すでに夢を叶えて成功したり、実現に向かって突き進む住人たちだがどこか欠けている。このドコカ・カケル感じが下巻ではどう変化するのかな。

  • 敢えて再び
    最も私を感動させてくれたこの作品のレビュー欄に続きを書きこもう。

    辻村深月「鍵のない夢を見る」にて「直木賞」受賞後の雑感:その2
    (前編は下記に)
    http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/4062758229

    辻村さんは、今後どちらの路線の小説を中心に書いていくのだろうか……。

    直木賞受賞作品なので購入して読んだという方々のレビューを色々なところで拝見した。
    予想通り、「鍵のない夢を見る」の評判はあまり良くない。
    多かったのが、「心理描写はすごいが、読後感が悪い」というもの。
    やはりなあ、というのが正直な気持ちだ。
    その方たちに伝えてあげたい。
    断言するが、辻村深月作品の魅力は、けしてそこにあるのではない、と。

    「鍵のない夢を見る」について、ある方のレビューを別のサイトで読んだのだが、
    ”今回は誰にも共感や同情する間も無く、全てのお話があっけなく終わってしまいました。
    彼女の持ち味であるイタさや不快さがもの足りなくて。辻村ワールドが味わえなかった”
    と書かれていて驚いた。
    「オーダーメイド殺人クラブ」や「水底フェスタ」など、最近の彼女の作品を読んだ方は、彼女の持ち味を”イタさ”や”不快さ”と思うのか……と愕然とした。
    「スロウハイツの神様」「名前探しの放課後」「ロードムービー」「凍りのくじら」などの講談社路線を読み続けてきた読者とは、彼女の小説に向き合う感覚が全く異なってしまうのだ。
    講談社路線を読んだ人は、彼女の持ち味が”イタさ”や”不快さ”などだとは頭の片隅にも浮かばないだろう。
    もちろん私も、彼女の持ち味が“イタさ”や“不快さ”であるなどとは夢にも思ったことはない。

    *「闇が深ければ深いほど、そこに射し込む光は柔らかく温かいはず」と彼女は断言していたのだから。「これからも気取ることなくハッピーエンドを提示していきたい」と語っていたのだから。
    (*:「野生時代 2009年8月号の『辻村深月インタビュー』より」
    だからこそ、それを見事に表現した「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」に感動し、私は感涙したのだから。

    よもや彼女はこのまま『文藝春秋路線』の作風に向かってしまうのではあるまい。
    彼女を貶めるつもりは毛頭ないが、だとしたらそれは一ファンとしてとても哀しいことである。
    そんなことをふと思うのは私だけの勝手なワガママでしょうか?

    註:ちなみに、来週7月28日のTBS「王様のブランチ」に辻村深月さんが出演するらしいので、何を語るのかよく聞いてみたいと思っています。

  • 下をはやくよんで!
    こんな、感想なんか読まないで、今すぐに下を読んで!

  • 売れっ子脚本家の環が所有する「スロウハイツ」に暮らす、漫画家志望の狩野、監督志望の正義、正義の恋人にして画家の卵すみれ、そして若者に絶大な人気を誇る(彼の作品に影響を受けた若者の殺人事件まで起こる始末)、作家の公輝とその雑誌編集長の黒木。
    彼らの共同生活が3年目を迎える頃、それぞれが迎える変化。

    フィクションにおいて「誰かとの共同生活」、とりわけクリエーター同士の共同生活はいつか終わりを迎えるものであり、この小説ももちろん例に漏れない。
    でも二度と帰ってこない瞬間だからこそ放ちうる瑞々しさや輝きは、登場人物だけではなく、それを憧れながら読んでいる読者にも深くそして長く留まる。
    この小説も、読み終わった後にじわじわと来る素敵な作品だった。

    作中に仕掛けられた(?)「XXの正体は誰だ」という謎や、その他いくつかの伏線は、あまりにも分かりやすく、恐らく作者はこれらの謎や伏線でミスリードをしようという気は無かったと思われる。
    じゃあ何故そういう伏線をばらまいたのかっていうのがイマイチ私の中では答えが出てないんだけど、まぁそれは些末な話なので深く考えないでおく。

    コウちゃんこと公輝と環の、二人の「愛」と軽々しく呼ぶことも憚られるほどの想い(でも敢えて名づけるなら「純愛」だよねー、やっぱり)が素晴らしい。特に最終章(公輝パート)が無かったら、私はこの小説の評価をあと1段階下げていたと思う。
    たとえ通じなくても、そばにいられなくても、その人がいると思うだけで強く前向きに進もうと思える気持ちって、素晴らしい。
    一方で作者は、誰かに寄りかかることは、この気持ちとは似て非なるものだということをスーによって冷静に(でも決して冷徹にではなく)提示する。辻村深月という人はとてもバランスの取れた人なのだと思う。

    余談ながら、辻村深月とちょっと語感の似ている水村美苗は、まさにこの作品の環を地で行く作家。母に対する描写の数々なんて、まるで水村の描く水村節子氏のようだった。

  • きっと全ての人にそれぞれのチヨダコーキがいて、それが小説でないにしろ、会った事もない他人を拠り所にして生きている。

    私にとってのチヨダコーキは辻村さんであり、アジカンであり、身近にいる家族や友達と同じかそれ以上に彼等に救われてきました。

    うまく言えないですが、どんな表現者も誰かにとってのチヨダコーキ。
    軽い気持ちでの批判中傷はしてはいけないな〜と、改めて思いました。
    …全然感想じゃない。

  • 好きな作家がいる、というだけで
    酷い状況を潜り抜けられることがある。

    コウちゃんの本は人を殺しませんー
    コウちゃんの本があったから、今まで生きてこられたー

    毎日学校で酷い目にあって、学校から帰ってきて家に居場所がないとき、
    高島屋の屋上から何度も地面を見つめても、
    海辺のカフカの下巻が文庫になるまでは乗り切ろう、とか、
    学校の行きに、或は、帰りに、線路に飛び込むタイミングを計っても、荻原規子の3部作が完了するまでは、乗り越えようとか、何度も何度も考えて、乗り切ってきた。

    それらの本を読んだ後の世界が、今まで苦痛に満ちた世界と少し変わっていることを信じていたし、その期待は裏切られなかったから。

    すべての本好きに捧げる、
    本の力で、過酷な状況を乗り越える切符を手にする話しだ。
    そしてこの本もまた、その切符になった。

  • 辻村作品の中でも大好きな作品です。
    才能のある人間が集い住んでいるスローハイツ。そこのオーナーは才能あふれる若き女性脚本家で、自分の母親をネタにのし上がって行った過去がある。
    スローハイツには様々な結果を残す優秀な人間が集まっているが、主人公が注目する新たな人物が存在することに気づいた。
    作中、色んな伏線があって、あとから驚いたり感心したりし通しです。
    長編ですが、飽きずに楽しませてくれます。

全766件中 1 - 10件を表示

辻村深月の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有川 浩
有川 浩
有効な右矢印 無効な右矢印

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)に関連する談話室の質問

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)に関連するまとめ

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)の作品紹介

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ-あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)の新書

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)のKindle版

ツイートする