冬のオペラ (中公文庫 き 26-2)

著者 :
  • 中央公論新社 (2000年2月1日発売)
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本棚登録 : 380
感想 : 29
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ミステリーらしくないミステリーと言ってしまっては作者に失礼であろうか?それでも、この柔らかな文体といい全編を通して流れてくる優しさは非常に心地よい読了感がある。
主人公の姫宮あゆみは、可愛らしい女性である。未成年なのに飲酒!は今なら許されない風潮ではあるが、当時は寛大であったのだろう。はにかみながらビールを飲んでいる姿を想像できてしまう。
そんな彼女が就職先の不動産事務所の上に引っ越してきた名探偵、巫弓彦と二人三脚で事件を解決していく様は非常に愉しげである。
神秘のベールに包まれた名探偵――難事件を解決したから名探偵ではない。名探偵と自己申告しているから名探偵なのである。まさに、一部の自己申告αブロガーとかそんな胡散臭さを髣髴させる彼は、事件が発生するたびに頭脳プレーで事件を解決していく。
形式としては安楽椅子パターンだが、巫の神秘性とワトスン役を買って出たあゆみのキャラクター性がマッチして痛快劇になっている。ラストの椿姫は悲しく、せつなくもあるが、それでも何処かしら救いが残されている。そんな風に感じられるのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(ミステリー)
感想投稿日 : 2012年9月4日
読了日 : 2012年9月4日
本棚登録日 : 2012年9月4日

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