どの作品にも流れている森さんならではの感覚がとても好きだ。本書の六章七章で、森さんの前世を透視した「霊能者」が、森さんという人の方向性として「だめなものを良くしたいというような願望。でも森さんの場合は、そのだめなものの中に自分も入れている」と言っていて、そうだよねえ、当たってるじゃん!と思ってしまった。
きっと賢明な人はこういう分野には近づかないんだろう。少し危なくて、たっぷり胡散臭くて。出来るかぎりの取材をしよう、でもきっと何もわからないんだろう、という著者の苛立ちやら諦めやらもどかしさやらが行間から立ち上る。
読みながらずっと、立花隆氏が書いた「臨死体験」を思い浮かべていたら、第16章でそのものが出てきた。立花氏も結論としては森さんと同じだ。「十分信頼に足る証拠は何故か出てこないが、否定することの出来ない現象があることは間違いない」。でも、文章から受ける印象はかなり違う。立花氏ははっきりと面白がっている。興味津々という感じだ。森さんは…、困惑している?半ばうんざりしている?
うまく言葉に出来ないが、他でもない自分の問題として苦悩しているところが、森さんの真骨頂だろう。この人は立花氏のような正統派ルポライターにはきっとなれないんだろう。そこが好きだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2012年6月12日
- 読了日 : 2012年6月12日
- 本棚登録日 : 2012年6月12日
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コメント 2件
じゅんさんのコメント
2012/06/12
たまもひさんのコメント
2012/06/12