すべてがFになる (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1998年12月11日発売)
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本棚登録 : 29341
感想 : 3036
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 本書の魅力は天才を具現化した人物が登場する事だと私は考えます。その人物が真賀田四季博士です。四季博士は物語の中では天才であったが、親を殺した理解不能な女性として語られています。しかし、本書を読み進めていくと四季博士は天才でもなく、異常者でもなく、神に近い存在であるかのような錯覚に陥りました。実際物語の中でも四季博士と隣り合わせで会話をした人物は「触れる事ができる距離なのに無限に遠いような気がする」と書かれています。  
 本書は推理小説であり、仰天するようなトリックももちろん楽しめますが、四季博士が語る言葉はどれも深みがあり、啓発書のような楽しみ方もおまけとして付いてきます。私が特に気に入っているのは四季博士が死を恐れない根拠として、人は意識を保ち続けると眠りたくなる。つまり意識を失いたがっている。眠っているのに起こされると不快になる。よって人は死を望んでいる。と言った内容を語るシーンです。  

 そして私は本書が何年に書かれたものか知らずに読み切りましたが、最後に1996年に発表されたものと知りおどろきました。デボラという人工知能に施設を管理させVR空間にゴーグルをして潜る。今でこそ主流ですが、これを20年以上前に執筆していたという点から、筆者の森博嗣さんも天才なのだと感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年9月6日
読了日 : 2020年9月4日
本棚登録日 : 2020年6月13日

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