静かだけど情熱的。
目の前に山(研究課題)を積み上げては高く高く登っていく、その喜びが詰まっていて、読んでいるとこちらまで高揚してしまうほど。
学問の意義。
勉強と研究の違い。
研究を進めていくときの感覚。
そして、生き方。
この読書のなかで、たくさんの収穫があった。
喜嶋先生は社会的な枠組みだけから見れば多くの欠点を抱えた人だ。でも主人公の視点から見たときそれらは全く逆の意味を持ち、ますます先生への尊敬は高まっていく。
なぜなら、それらが研究者として正しい道を歩いているが故だと理解できるから。
「学問には王道しかない」という先生の言葉から主人公が汲み取ったものと、その純粋さにひたすら圧倒される。
こういう生き方もあるんだと、衝撃を受けた。
でもやっぱりそういう生き方は難しいもので、生きている限り、たくさんのものに縛られていく。
素敵な奥さんと出会って、新しい家族が出来て、研究一本に突き進めなくなってからの文章に泣きそうになった。
それが家庭を持った者としてのごくあるべき姿、「王道」なのだと私は思うけれど、同時に研究者としての王道を外れてしまうことでもあるというのはやはり切ない。
それでもなお(だからこそ?)喜嶋先生に敬愛と信頼の念を捧げつづける主人公の姿が悲しすぎる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年10月25日
- 読了日 : 2013年10月25日
- 本棚登録日 : 2013年10月25日
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