悪意 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年1月17日発売)
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本棚登録 : 23763
感想 : 1955
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加賀恭一郎シリーズ、最初の話から遡りの4冊目。
先に発刊された「どちらかが彼女を殺した」が“第4の事件”でこちらが“第3の事件”なのは、加賀が練馬署の刑事だったり捜査一課の刑事だったりすることの整合を取っているからのようね。
さて、このお話、被害者の友人の手記と加賀の独白が交互に語られる構成で、100頁も行かない内に「解決の章」になって、この後はどうなるんだろうって思わされたが、その後起訴するに足る証拠固めや動機の解明に費やされたお話も本半ばで犯人の「告白の章」となり、100頁を余して“真相”が明らかにされて更に驚かされる。
そして残された頁を捲りながら、読者は「悪意」というこの本のタイトルの意味するところを考えさせられることになり、裏表紙には『超一流のフー&ホワイダニット』とあるが、確かに真の動機に辿り着いた時、そのおぞましさに唸らされる。
あれだけ犯人が思い描いたように警察が“真相”に辿り着くのかとか、そこで終わらずに加賀のようにその“真相”に疑いを持つ者が出てくるのかと考えると、ちょっとうまく作られ過ぎという感じはするが、一方、ここに来て、加賀が教師を辞めた理由が語られシリーズ物としての体を成して来るとともに、作中の人物の口を通して「人間を描く」ことについて語る作者の心持ちが表されて来たり、第1の事件から遡る面白さも感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2017年読んだ本
感想投稿日 : 2017年1月22日
読了日 : 2017年1月20日
本棚登録日 : 2017年1月22日

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