数年前はつまらないと思い途中で読むのを止めてしまった小説だったのですが、最近本棚から引っ張りだして読んでみたら不思議ととても面白く感じました。これは私ごとのエピソードなのですが、以前より文章を読めるようになったのだなぁと、感動。
どの話も、オチがあって、風刺効き、訴えかけるものがあります。一つ一つが洗練されていて妥協していない感じに、作者のショート・ショートにかける情熱とこだわりがひしひしと伝わってきました。
とくに『壁の穴』という話が面白かったです。輝きに満ちた世界を次々目にするにつれ、今いる現実がちっぽけで劣っているように主人公には映ってきてしまったのかもしれません。現実逃避に溺れていくにつれて様子が豹変していくところは、読んでいて恐ろしさを感じました。私には、ナイフであけた穴から様々な景色を見ることに夢中になる行為は、現代のインターネットに没頭する人の姿にも似ていて、もしかして作者はこのことを見越していたのではないかと考えてしまいました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年1月12日
- 読了日 : 2013年1月27日
- 本棚登録日 : 2013年1月12日
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