正統派山岳小説の力作。
若き登山家の矢代翔平は、世界第二の高峰k2を登攀中に最愛のパートナー聖美を失ってしまう。しかも、翔平と共に宙吊りになった聖美が、翔平を助けるために自らロープ切断して命を絶ってしまった。
ショックから立ち直れず引きこもり生活を続けていた翔平に、再びk2へのチャレンジを持ちかけたのは、翔平の以前の山仲間で登山ツアーを生業とする亮太。ブロードピークへの公募登山にガイドとして同行し、その後にk2をアタックしよう。という提案だった。
そのツアーに参加したのが日本エレクトロメディカル創業者の神津邦正とその秘書の竹原。ワンマン経営者だが経営権を巡る社内抗争を抱えていて…。
ブロードピークへのアタックは、人為的なミスを含めこれでもかと言うくらいトラブル続出で、ちょっとうんざりするほど。でも、世界屈指の高峰への挑戦はそれだけ厳しい(幸運が重ならないと成功しないくらい大変な)ことなのかも知れない、と思い直した。
神津が登山の魅力について語った言葉「しかし山に登ることで、わたしは〈魂の糧〉を得た。それは何者によっても奪いとることができないわたしという人間の本質に関わるものだ。それに気づかずこの歳まで馬齡を重ねてきた。だがわたしはいまそれを知っている。それが命を懸けてでも追い求める価値のあるものだということを――」が印象に残った。沢木耕太郎の「凍」を読み直して見ようかな。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(その他)
- 感想投稿日 : 2020年7月26日
- 読了日 : 2020年7月26日
- 本棚登録日 : 2020年7月25日
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