砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書 276)

著者 :
  • 岩波書店 (1996年7月22日発売)
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人名とか、用語とか覚えられん……

歴史自体は嫌いでないものの、学校で習う歴史の授業はそのために好きになれなかった記憶があり、今ちょくちょくと読むようになった歴史系の本も、たまにそこで挫折する。

『砂糖の世界史』はそういう点において、とてもとっつきやすかった。用語だとか人名だとかはゼロというわけではないけれど、
砂糖の通史を追うことによって、大航海時代から、植民地や奴隷制度から産業革命に至るまで、とても整理され分かりやすく書かれています。

またそうした教科書に出てくる大きな歴史だけでなく、砂糖がいかに市民に定着していくかを描いていく中で、イギリスを中心とした市民の文化が描かれていくのも面白かった。

そして砂糖が安価になるという現象を通して、国と国の相互の結びつきについて実感させられ、個別の国だけでなく、世界全体をみる必要性、またそうした研究や学説もあることも分かりやすく、理解できる。
言ってみれば世界目線からも、市民目線からも砂糖を通して歴史が語られていきます。

そしてこの本は過去のことだけを語るだけにとどまらない。砂糖の生産によって生まれたプランテーションや奴隷制度。それが生んだ格差や様々なひずみは現在も続いています。
南北問題のような先進国と途上国の格差、人種差別……、現代を生きるための問題は、過去からずっと続いているということにも、改めて気づかされる。

学校で歴史を習っているときは、とにかくその時代のことを詰め込むだけ詰め込むのが正解のように思っていたけど、歴史を学ぶ意義というのは、本来こういうところにあるべきだったのだな、と感じます。

岩波ジュニア新書の名著とも呼ばれる一冊。それは読みやすさ、面白さだけでなく、改めて世界は一つでつながっているということ、そして現代は過去と地続きであること、そして歴史を学ぶ意義を気づかされてくれるからだと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション・新書・エッセイ・評論など
感想投稿日 : 2021年2月21日
読了日 : 2021年2月21日
本棚登録日 : 2021年2月21日

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