晴子からの手紙は、晴子が福澤家への奉公を始める時期へと移っていく。そして徐々に母と息子の真実が明らかになっていく。
疲れる読書でした(苦笑)。
文章の密度というか、濃度というか、粘度というか、とにもかくにもこんな文章を書けるのは高村さんを置いて他にいないだろうな、という感じでした。
政治、名門家族の相剋、過酷な漁、いずれの描写も濃い、というか濃すぎる……。なんでこんな文章を書けるんだろうな、と思ってしまいます。
晴子と夫の淳三との関係が、個人的に一番時代を感じました。現代のように恋愛結婚をしたわけでもなく、ただ成り行きと、福澤家の思惑で籍を入れた晴子。
その二人の関係性は愛情とか、親愛とかとはどこか違う、晴子は福澤家の血である淳三に憎しみすらもありつつも、それすらも飲み込む時代の流れ、時代のうねり、そんなものを感じました。
余人の理解を排した文章と展開の果てに待つ最後の一文。彰之のように自分も風が吹き荒れ、波が打ち寄せる浜辺に立っているかのような、そんな荒涼とした気持ちで読み終えました。
読み終えた時、説明のしようのない不思議な感情がこみあげてきました。ただ、もう一回読みたいか、ってなるとどうかなあ…
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文芸・文学・群像劇
- 感想投稿日 : 2016年1月14日
- 読了日 : 2016年1月11日
- 本棚登録日 : 2016年1月11日
みんなの感想をみる