あかんべえ(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年12月22日発売)
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 ふね屋に住む亡者たちの因縁に迫っていく下巻。

 下巻の前半から中盤にかけては、上巻で行われたふね屋での霊能力比べの際に起こった事件の真相を探っていく展開。

 関係者全員が集まっての大立ち回りは結構混乱もしましたが、(亡者は人によって見えたり見えなかったりするので生者と亡者が一堂に会すると誰が誰の声を聞いているのか、見えているのか非常に分かりづらいのです)
そこで明らかになっていく人の業の深さ、感情の機微の書き分けの素晴らしさは相変わらずのクオリティの高さ!

 生死の境を彷徨ったおりんを除いて生者が亡者を見るために必要な条件は、「亡者と生者が同じ境遇や心情を抱えているということ」例えば、親のいない子どもの霊が見えるのは同じように親のいない子どもだけという具合です。

 だからこそ亡者たちは生者たちに強く呼びかけます。
それは「お前の気持ちはわかる。お前も一緒に堕ちよう」という悪魔のささやきであったり「お前はこうなるべきではない」という心からの叫びであったり、
そうした叫びを通して人の在り方、業の深さを強く考えさせられました。

 クライマックスの霊たちの因縁が明らかになるところが中盤の大立ち回りと比較してあっさり気味に感じられたのが残念なところ…。もうあと100ページあっても全然文句はないのに(苦笑)。

 でも別れのシーンはやっぱりグッときました。特におりんとおりんに対してあかんべえばかりしていた、亡者のお梅が最後におりんにかけた言葉は悲しくも温かかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説・歴史小説
感想投稿日 : 2015年5月24日
読了日 : 2015年5月21日
本棚登録日 : 2015年5月20日

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