入門 東南アジア近現代史 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2017年1月20日発売)
3.60
  • (1)
  • (4)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 70
感想 : 5

 東南アジア諸国は多くが欧米植民地となり、日本による占領を経て独立したが、その成り立ちや社会や経済の制度はそれぞれ異なっているいる。「多様化の中の統一」をキーワードに、ASEANなどの地域協調組織を形成し今も経済発展の途中にある東南アジア国家について概観している。

 中国の次は東南アジアに赴任する可能性が高くなっているため、多少は勉強しておこうと読んでみたが、この地域についてほとんど何も知らなかったことを痛感した。

 中国も多民族国家だが大半が漢民族で、政府も一党独裁で強権的に統一されている。これに対して東南アジアの場合、複数の主要民族の格差やバランスに配慮した政治が不可欠となるほど本格的な多民族国家となっていることが多い。

 また国家間でも多様だ。独立後すぐ自由主義になった国もあれば社会主義になった国もあり、発展度合いも異なる。人口も2億を超える国から数百万しかいない国まである。天然資源の豊富な国もあれば何もない国もある。主要宗教も仏教、イスラム教、キリスト教と異なる。国の中でも外でも、まとめるのは大変だろう。

 しかし、キリスト教の自由主義国というひとつの価値観でまとめようとしたEUで様々な問題が起きている現状を見ると、「多様性の中の統一」という東南アジアのゆるやかな協調方式は、長い目で見ればうまくいくのではないかと思われる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年1月31日
読了日 : 2019年1月30日
本棚登録日 : 2019年1月31日

みんなの感想をみる

ツイートする