ルピナスさん: 小さなおばあさんのお話

  • ほるぷ出版 (1987年10月15日発売)
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バーバラ・クーニーさんがこの絵本を世に出したのは1982年。彼女は1917年生まれだから、引き算すると、彼女が65歳ごろの作品!
それで合点がいった。ミス・ランフィアスさんことルピアスさん=小さなおばあさんは、彼女自身だったんだ。そして彼女も「世の中をもっとうつくしくするために何をしたらいいか」を、ずっと考え続けていたんだ。

おそらく海を見おろす丘の上に住み、ルピアスの花の種をまいたという話自体は実話ではなく彼女の長年の願望だったのだろう。だけど彼女は絵本作家として作品を世に出すことで少しずつ夢を現実化してきた。
そして実際にルピアスの種をまかなくても、色彩豊かで美しいたくさんのルピアスの花の絵と、ひとりの女の子が紆余曲折の人生をたどりながらも、おじいさんから教えられた「世の中をもっとうつくしくするために、なにかしてもらいたい」ということを忘れずに、とうとう実現させるという素敵な物語とを絵本として作品にしてくれたことで、多くの読者の心に花を咲かせてくれたんだ。

だからこの絵本は子ども向けに書かれたようでいて、実は、髪が真っ白になって、杖をついて歩くようになった、おばあさんやおじいさんと呼ばれる世代のための本だ。
もしその世代の方が、小さな子どもに何かをプレゼントしなきゃいけなくなったとき、プレゼントにはゲーム機とかテーマパークに連れて行くこととかじゃなくて、この絵本を読み聞かせたり贈ってあげたりしたら素敵だろうな。

小さな子どもがこの本の美しさと贈った方の心遣いとを素直に理解して喜んでくれたらうれしいし、万が一その時点では子どもにあまり喜ばれなくても、いつか、種が育って花になるかのように、子どもの心を成長させるはずという期待が、祖父母世代にとっての心の糧になるはずだから。

そのことこそ、クーニーさんが望んでいた「世の中がもっとうつくしくなるための、なにか」のひとつにちがいないと真剣に思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月24日
読了日 : 2022年12月24日
本棚登録日 : 2022年12月24日

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