バイオリニストは目が赤い (新潮文庫) (新潮文庫 つ 25-1)

著者 :
  • 新潮社 (2009年11月28日発売)
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感想 : 25
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 鶴我さんはNHK交響楽団のバイオリン奏者だった方。抱腹絶倒のエッセイ集で、なんで誰か、もっと早くこの本を教えてくれなかったんだろう、と悔やまれる。

 アマチュアオーケストラなど、ちょっとオケをかじった人なら、とても良くわかる話しだし、日本一のプロ・オーケストラならではの垂涎のお話しなど、ユーモアたっぷりに紹介してくれている。僕より少し上の世代だが、自分も間違ってプロの演奏家にでもなっていれば、こういう世界で楽しめたのかもしれない、と羨ましく思った。

 なんだかんだキツイ口調で語っても、クラシック音楽が、バイオリンが大好きなんだな、と良く感じられる。周囲の楽団の方々の話しからも、同じ空気が感じられる。趣味と実益を兼ねた職業、って素晴らしい。(といっても、それまでの不断の努力と、才能も必要なんだけど)

 NHK交響楽団も、「カイシャ」と言われてしまえば、その通りかもしれない。給料もらって演奏を仕事としているわけだから、僕たちサラリーマンと変わらない。
 プロの演奏会で、よくやる名曲を聴こうとする時、指揮者の特徴が出るのは最初の方の公演で、だんだんオーケストラ自体の曲風に戻っていく、って話しはおもしろかった。これから、シリーズ公演の時は、初日の公演を聴くことにしよう。

 以前に、指揮者トークで、歳をとると、スコアの細かい楽譜が見えなくなってくるので、指揮台に楽譜を置いても意味がない、って話しを聞いた。演奏家も同じで細かい楽譜がだんだん見えなくなってくると、サラリーマンとしての仕事も終わりヨってことになるのかもしれない。(すべて暗譜して弾ければ問題ないのかもしれない)目を赤くして楽譜をやぶにらみしながら家で練習している様子を思い浮かべて、苦笑してしまった。
 いずれにせよ、楽団員もサラリーマン。そんな視点で、軽く読め、その上、クラシック音楽についてのウンチクも教えてくれる。お奨めの本です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 音楽
感想投稿日 : 2010年7月24日
読了日 : 2010年4月1日
本棚登録日 : 2010年6月21日

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