母性

著者 :
  • 新潮社 (2012年10月31日発売)
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 『愛能限り大切に育ててきた娘』

母の手記と娘の回想から浮かびあがってくる真実

母は無償の愛を母親から与えられて来た。
母は母親に褒めて貰う為、喜んで貰う為、生きて来た
また、至福と思っていた。
その母が母親になった時、愛する自分の母親に褒められる様な子供に育てようとしてしまう。
途中までそれは成功していたが…。
娘が5歳の時、娘と母親の命どちらかを選ばなければならない事件が起きる。
迷わず母親を選ぼうとする母。しかし、母親は許さず娘が助かる。

娘は辛い境遇にいる母をいつも気遣い守り助けようと行動するのに
母には全く想いは伝わらず逆に娘のせいで辛い境遇がますます辛くなっていると恨んでさえいる。
母の手記では、愛能限り大切に育てて来たと思い込んでいるが、
自分の思い通りにならない娘など愛してなどいなかった。
いつまでも子供のままでいたい人
何より自分が大切
何より世間体が大切
心から思うのではなく、こうすれば喜ぶはず褒められるはずという自分の考えや
計算・価値観で行動をしている。
ただただ、悲劇のヒロインの様に嘆き悲しみその怒りを娘にぶつけているというのに
母の手記は母にとって真実かもしれないが、娘の回想とは明らかにズレがある…。
娘は、どうすれば母に認められるのか
どうすれば母に愛されるのか
どうすれば無償の愛を与えられるのか
ただただ、求めていた

そんな母と娘の関係を客観的に「娘は母に好かれようと必死だけど、母は娘から故意に目を逸らしている」
事に気付きながら何も言わず逃げ出す
この父親本当に嫌な奴
最低


最後に娘はもうすぐ母親になろうとしていた。
反面教師として、自分の子供には自分が母に望んでいたことをすると決めている

『時は流れる。流れるからこそ、母への思いも変化する。
それでも愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に
捧げたいと思う気持ちが、母性なのではないだろうか。』

亡くなった母親の子育てがどうだったから、母のような人間が出来たのだろう?
子育てとは、十人十色ひとりひとり違っていて、母の子供に接する態度・言葉も
受け止める子供によって様々に捉えられているとおもう。
この母のような人は意外にも身の周りに沢山居る気がします。
どのような子育てが正しいという回答はない…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: リケル 家族
感想投稿日 : 2016年2月24日
読了日 : 2014年9月4日
本棚登録日 : 2016年2月24日

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