フィリピン出張で読んだ三冊目の小説が酒見賢一氏の作品『墨攻』だ。諸子百家が活躍したと言われる中国古代戦国時代を舞台にした小説で、諸子百家のなかですでに忘れ去れて歴史書にも多くは語られていない墨子が起こした教団の構成員が優秀であるが故に教えを純粋に信じて実行に映した故に出会う事になる主人公の悲劇が描かれている。
墨子の教えは民を不幸にする戦を出来るだけ排除するというもので、しかたなく戦いをする際はあくまでも守りに徹するというもので政治色もすくなくかなりユニークな教えとして描かれている。わずかな情報の中から作者が作り出したものだが、この物語で描かれた墨子教団の様子通じで伝わってくる教えは本当にこの教団は存在したのではと思わせる位リアリティがあり魅力ももっている。ただこのお話で描かれているのは彼が教団で自らを鍛える事で得た技術を持ってして活躍する日のあたる部分が派手に描かれながらも、あまりに純粋に信じた事を多くの人と行動を起こそうとするときに人との関わりの中で全くの遊びのなさというかフレキシブルな付き合いが出来無いが為に物事の達成の前に内側から崩れてしまう悲劇に見舞われてしまうというちょっとこそばゆくなる教訓ののようなものだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年1月28日
- 読了日 : 2016年1月27日
- 本棚登録日 : 2016年1月27日
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