ドン・キホーテ 後篇1 (岩波文庫 赤 721-4)

  • 岩波書店 (2001年2月16日発売)
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本棚登録 : 407
感想 : 28
4

前篇のレビューは下記。
http://booklog.jp/users/pilvoj/archives/1/4003272110

後篇は完全にメタフィクションである。
作中で前篇が出版されており、しかも執筆中に出版された偽作も登場。前篇の不備(サンチョの驢馬がいなくなる件)まで取り込んでいる。
このため、ドン・キホーテやサンチョの前篇での滑稽な活躍は作中の登場人物に知られているのである。
10年という前後篇の時間的差異(作中ではひと月程度だったと記憶しているが、時に20年などというメタい時間軸が出てきたりもする)をそのまま持ち込むメタフィクション性は面白いし、今でも古いものでは無いだろう。

そして後篇ではドン・キホーテの狂気にも変化が訪れている。
騎士道に関する狂気はそのままだが、旅籠を城と見間違える様なことが無くなっているのである。
ではどうやって滑稽な物語が展開されるか。
サンチョや、周囲の前篇を知る登場人物によって担がれることで生じるのである。
周囲は自分たちの楽しみのために彼をからかい痛めつけるのだが、彼は常に騎士道的な振る舞いをする。
果たしてどちらが狂気に囚われているのか。

「ドン・キホーテ」は頭の狂った馬鹿という様な意味で用いられるが、それは明らかに誤りだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(海外)
感想投稿日 : 2015年7月18日
読了日 : 2015年7月7日
本棚登録日 : 2015年6月23日

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