新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫) (文春文庫 し 1-67)

著者 :
  • 文藝春秋 (1998年9月10日発売)
4.11
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  • (10)
本棚登録 : 12429
感想 : 1102
4

当初これは☆5だなと思ったのだが、作品として面白かったのか素材が面白かったのか考えたところ、恐らく後者だったので☆は4つにしておいた。


・作品として

そういえば私は歴史小説というものをかつて読んだことが無い気がする。
これを読んだ経緯は、友人に「『峠』を読め。でもその前に『竜馬がゆく』を読め。」と言われたことによる(この後もいくつかスケジュールされたが、酒の力で忘れた)。
色々なところで推薦されている作品であることもあって以前から積読リストには載っていたのだが、このリストは消化よりも増殖の方が早いので、何だかんだ読めなかった可能性は否定できない。
結果としては彼のお陰でいい作品を読ませてもらった。

閑話休題。

この作品の評としてしばしば挙がっている様なので歴史小説の特徴という訳ではないのだろうが、この作品(というか司馬遼太郎氏の書き方?)、纏まりが無い。悪い様にしか聞こえないが、そういう意味ではなく、あくまでも特徴として。
本筋を追っているところでガンガン余談を入れてくる。出てきた脇役や土地の細かい背景を述べる様なレベルではなく、自分の取材旅行時のエピソードまで入れてきたりする。
そして繰り返しが多い。同じ話が3回も4回も出てくることは珍しくない。「以前にも書いたが~」という前置きがあるところもあるので、案外普通に書いてて忘れているのではと思ってしまう。
こういった特徴は言わば「飲み屋で調子に乗って話している」様で、書いている方が乗っているのが分かる。
読みづらいのではと思うかもしれないし実際にそういう側面が無いわけではないが、著者が乗っている方が面白いものである。


・素材として

坂本竜馬という男の異質っぷりが最初から最後まで展開される。
幕府偉い、殿様偉い、というガチガチの封建社会(しかも竜馬の出身の土佐藩は階級差別が他藩以上らしい)の中にあって、その価値観を全く寄せ付けずそんなものクソ食らえと言わんばかり、というか実際に言い続けて結局その制度を崩壊させてしまう。
序盤こそ剣術は一流のただの変人といった体だが、全国を股に掛け始めるやその変人部分が具体的行動と結びつき、独創的としか言いようの無い成果となっていく。時代を変えるというのはこういうことなのだろう。しかもその倒幕すら、彼にとっては真の目的でも何でもないのだ。
本当にこんな人物が現存したのか?と思うこと百度とは言わないが、二十度は少なくともあった気がする。歴史小説の最高の素材の一つだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(国内)
感想投稿日 : 2017年6月11日
読了日 : 2017年4月12日
本棚登録日 : 2017年4月7日

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