「宮沢賢治の彼方へ」を読むため、予習あるいは復習として読んだ。妹から贈られた図書カードで購入した。
宮沢賢治の童話で代表的なものはおそらく一読しているはずだが、内容をあまりよく覚えていないものもあり、その中の一つが「風の又三郎」だった。
同作は、記憶や印象の中にあるよりもかなり現実的な内容だった。解説にもある通り、例えば「銀河鉄道の夜」などと違い、一見すると現実に起こり得るような出来事しか語られていない、あるいは、子どもの思い込みや想像の一部でしかないようにも思える。しかしそのことがかえって、まったくのファンタジーよりも、大人たちからするとなんの変わり映えもないような日常の中に、子どもたちの世界で、実は不思議なことが隠れていると言ったような雰囲気をうまく作り出していたと思う。
また「銀河鉄道の夜」については、もう何度も読んでいるはずだが、やはりまず第一の感想として、描写が美しい。宮沢賢治はやはり童話においても、詩人であり、かつやはり農学や天文学など、理系的学問の広範な知識を持つ科学者でもあるのだなと改めて感じた。銀河鉄道のどの景色や風物も、登場のたびにその美しさが強調される。想像上のそれらがどんなに美しいかを、現実の植物や鉱物を引き合いに出したりして表現しているのだが、なんとなくだが、作者賢治がそれら植物や鉱物のどれにも深い関心や愛着を持っているように思われる。そしてこの作品は、銀河の風景の光り輝く美しさと、「死」を重要なテーマにしている。死を美化しているとまでは思わないが、妹のそれを乗り越えるためには、物語が必要だったのだろうか。
宮沢賢治の童話集は他の出版社からも出ているが、本書は、特に有名なものを数を絞って収録していて、手軽に読めるので、見つけることができてよかった。
- 感想投稿日 : 2020年7月23日
- 読了日 : 2020年7月23日
- 本棚登録日 : 2020年7月23日
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