ーーーーー完全にネタバレですーーーーー
有名な作品ですし、ネタバレしただけでつまらなくなるような作品でもないと思いますが。これは、どうしてもハンスに感情移入せずには読めない。日本で教育を受けた人なら誰だってそうなのかも。ハンスはつめこみ教育と、まわりからの期待とに押しつぶされて死んでしまう。たぶん、自殺だったのだ思う。僕自身は、教育はある程度つめこみ的に行われるべきだとは考えながら、厳しい教育は受けたことがないし、両親にも過度な期待はされなかった。幸せに育ったものだなあ。感想になってないか。
ヘッセの翻訳を読むのは、中学1年の時に、教科書にあった『少年の日の思い出』という、クジャクヤママユなる蛾をめぐる話を読んで以来。Wikipediaによればその作品は1947年から教科書に採用されていて、2009年度は81.7%の中学生が読んでいるというから、誰でも知ってる作品だ。ちなみに高橋健二訳。今回、積読していたこの本を読んだのは、この高橋健二が登場する『文学部をめぐる病』という本を読んでるうちに、読まなければと思うようになったから。あとは、たまには新書みたいの以外にも読まないと体に悪いかな、と。
引用。「そしていつでも科学は、新らしい革袋に気をとられて、古い酒を忘れてしまったし、その一方、芸術家はのんきにいろいろとせんぱくな誤りを固執しながらも、多くの人達をなぐさめたり、喜ばせたりしてきた。批判と創造、科学と芸術のあいだには、昔ながらの、不釣合な戦いがあって、その場合、そうなってもだれのとくにもならないのに、いつでも前者は正しいとされるが、しかし後者は、信仰と愛情となぐさめと美と永世感のたねをまいては、再三再四いい土壌を見出すのである。なぜなら、生は死よりも強いし、信仰は疑惑よりも優勢だからである。」(p.51,52)科学と芸術、もしくは科学であろうとする神学と芸術である神学との対比。よくわからないですけど(訳のせい?)。
訳は、まあ読みやすかったと思うし、気に入ったとこもあります。たとえばホオマアを辞書をひきながら読むときの、「ふるえるほどのいらだちと緊張に満たされて」(p.65)とかを読んで、ホメロスってそんなすごいのかあと。ただ、「車輪の下」というのが本文中に出てくるのを知ってたのに、どこだったのか気づかなかった。それは解説にもあるように、unters Rad kommenを直訳せずに「車にひかれる」としてるから。でも、車にひかれるだと、具体的過ぎて本当に車にひかれるということを意図しているようにしか聞こえない。多分、そうではないと思うのだけど。
http://miura.k-server.org/newpage117.htmによれば、高橋訳、実吉訳とも低水準で、旺文社の岩淵訳(絶版!)がよいそうです。というわけで、感想らしい感想も書かずに終わり。
訳・解説は実吉捷郎。
- 感想投稿日 : 2009年12月11日
- 読了日 : 2009年12月20日
- 本棚登録日 : 2009年12月11日
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