ん: 日本語最後の謎に挑む (新潮新書 349)

著者 :
  • 新潮社 (2010年2月17日発売)
3.15
  • (11)
  • (42)
  • (63)
  • (29)
  • (6)
本棚登録 : 622
感想 : 80
2

 五十音の中で確立したのがもっとも遅い「ん」。古文書では発音しても表記しなかったり,別の字で表したりしていて,「ん」はかなり謎に包まれている。明快に解いてくれるかと期待して読んだが,釈然としない。
 文献でわかる一応の事実は次のごとし。 11世紀までは「ン」はなくて,唇内撥音(m)は「ム」,舌内撥音(n)は「ニ」,喉内撥音(ng)は「イ」が使われた。 ひらがなの「ん」は初出が12世紀だが,現在と同じように撥音を表すために使われたかどうかははっきりしない。
 本書では空海とか最澄とか本居宣長とか幸田露伴とかいろいろ出てくるが,結局「ん」についてはよくわからないということがぼんやりながらわかった程度だった。筆者の「ん」への思い入れもよくわからない。
「もしも、日本語に『ん』がなくなったとしたら、我々はおそらく日本語のリズムを失い、日本語が持つ『情緒』と『システム』を繋ぐ糸を断ち切り、日本のしっとりとして深い文化を、根底から崩壊させることになるのではあるまいか。…『ん』は、じつは言語としての問題以上に、より根源的な日本の精神や文化を支える大きな礎石だったのである。」(p.186)と本書は結ばれるが,なんでそうなるのか,まったく理解しがたい。なんじゃそりゃって感じ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 言語
感想投稿日 : 2012年10月17日
読了日 : 2012年10月12日
本棚登録日 : 2012年10月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする