燃えよ剣(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1972年6月19日発売)
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下巻。
ここからの新撰組は、正直いいところがあまりなく、戦績だけで見るとほぼ負け戦だ。それは史実で知っていた。
けれど土方の目線で戦を見つめると、彼は殆どの戦局を読んでいる。色々な事に気がつき、知識も頭に入れた上で、最後に勘を持っている。
その彼が新撰組が瓦解した後、最後まで戦をつづけていく姿が本当にかっこうよく、時間を忘れて読み進んだ。
上巻に2週ほどかかっていたが、下巻は4日ほどで読み終わった。

組織を維持するために冷酷な処断もし、鬼の副長と呼ばれた土方が、後半江戸に帰ってからというものどんどんと人間味をおびてくる。
最後の五稜郭で、新撰組として戦ってきた人たちを江戸に帰す、自分についてきたお雪とも別れる、慕ってきた小姓を自分の故郷へ送る。皆、土方と戦いたくて残ると言うが、それをよしとせずに見送る。
何人もの人を殺してきた土方が、最後に信用して信頼して生き残らせるのが新撰組からの仲間であるのは、土方の人間としての優しさを見てしまった気持ちになった。
彼は死ぬことを決めていたが、それを誰かと道連れに共有するつもりはなく、ただこのまま生きながらえる生涯だけは、先に死んだ仲間にあわす顔がない。その一心で最後まで駆け抜けた土方が格好よく、哀れにも見える。

最後の晩、死んだ仲間達の亡霊を見る。その姿のあった場所に寝そべる。ぬくもりを追おうとする。
土方が愛おしく思えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年4月29日
読了日 : 2015年4月29日
本棚登録日 : 2015年4月29日

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