インド最古の聖典であるヴェーダのうち、最古にして最も有名な讃歌集『リグ・ヴェーダ』の抄訳。同著者による『世界古典文学全集 3』(筑摩書房:1967年)収録の訳を改訳したもので、ヴェーダ時代より神々への祭祀に用いられてきた諸々の讃歌を収めている。
本書は、『リグ・ヴェーダ』収録の讃歌を(主要な神々に捧げられたものなどを中心に)ピックアップして邦訳したものである。インドラ、アグニ、ソーマなどヴェーダ時代の主要な神々は勿論、ヴィシュヌ、ルドラ(シヴァ)など後代のヒンドゥー教において大きな勢力を有する神々に対する讃歌が数多く収録されており、当時の宗教風景や神話を(断片的ながらも)窺うことが出来る。ヴェーダにて垣間見える宗教思想は後代のインド思想にも深い影響力を有しているので、本書を押さえておくことはそのままインド思想の理解に繋がる。抄訳という性格上原文よりカットされた讃歌が多く、また難解な文章を文語体的に訳しているので「読み物」として読みにくく思えることは事実だが、それでもインド思想の一底流を為す『リグ・ヴェーダ』を手ごろに読む事が出来るというのは大きいだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
インド神話
- 感想投稿日 : 2016年1月17日
- 読了日 : 2016年1月17日
- 本棚登録日 : 2015年7月25日
みんなの感想をみる