雨降りvega (幻冬舎ルチル文庫)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス (2013年12月17日発売)
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本棚登録 : 520
感想 : 46
5

ゲイであることに悩む高校生、文人の心の支えになってくれた相手はネットの掲示板で知り合った顔も知らない青年。
アルタイルとベガ、と名乗りながらフリーメールでやりとりを交わしていたふたりはある日、カムアウトをした友人の心の内を偶然耳にした文人のヘルプコールを受けて初めて出会いーー。
家族に愛され、包み込まれるような優しさの中で育った文人の抱える行き場のないやりきれなさ、親友からの裏切り、突然の『告白』への戸惑いを拭いされなかった友人達、すべてがリアルで痛ましい……。
一度きり、もう会わないと心に決めたはずのアルタイルとベガは、婚約者とその家族として再会してしまいーー。

運命の悪戯にもほどがあるだろうという感じですが、新開と文人、それぞれが『家族になるかもしれない同士』として、もどかしさや罪悪感に襲われながら心を通わせ合うさまがはらはらとせつない。
あらたな親友かと思った神崎くんはBL界恒例な当て馬人事。育った環境の複雑さから恋愛依存的で独占欲が強く、やや粗暴な神崎くんは凪良キャラでは主役クラスでしばしば登場していたキャラクター像ですね。
彼が文人に惹かれる理由は確かにわかってしまいますが、応えられるわけがないんだよな…。
婚約者の心の揺れに気付いていた夏那が神崎くんとの事件を通して真相を知ってしまったことから物語は急加速。
お互いに傷つけてしまった相手のことを思い、一度だけ結ばれても、またもや織姫と彦星のように別れを決意した二人は長い時間をかけて再会を果たし……。

細やかな心理描写やキャラクター造形、丁寧でやわらかく情緒的な表現は良い意味でBLレーベルらしくなく、近年一般レーベルで発表されている作品のトーンに近め。
文章の砕け具合が作品によって異なっているのは気になるポイントですが、ルチルのレーベルカラーもあるのでしょうか。ラブシーンがやや物足りないくらいさらりと流されているあたりは、あまり激しい描写は苦手で……という方にも良さそう。

お姉さんがあんまりにも不憫だし、男同士であること以上にハードルは高い&遠距離恋愛の確定してしまっているふたりですが、空白の分も埋め合うようにお互いを大切に過ごしていってほしいな、と素直に思う二人でした。
神崎くんも彼氏候補さんと今度は良い恋愛が出来るといいね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月18日
読了日 : 2021年4月18日
本棚登録日 : 2021年4月18日

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