盗まれたフェルメール (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社 (2000年3月1日発売)
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感想 : 14

20140615読了
2000年出版。絵画の盗難事件を追う本。おもしろい!ボストンで盗まれた「合奏」、ロンドンで盗まれた「ギターを弾く女」。作品数の少ないフェルメールは盗難の対象として目を付けられがち。ロンドンのほうは解決したが、1990年に姿を消した「合奏」はいまだ見つかっていない(ガードナー美術館事件)。●絵画窃盗の動機は
①自分でその絵を所有したい→警備の充実により減少
②コレクターによる窃盗委嘱→そのような悪徳コレクターの存在を否定する専門家も多い
③画商に売る→足のつきにくい目立たない絵が対象
④オークション会社に依託する→盗品の依託は会社にとって不名誉かつ不利益であり、絵の来歴チェックは厳しいが、チェックにもれる場合もある
⑤思惑だけで盗む→売却手段や買い手のアテがない、いきあたりばったりの窃盗
⑥投資→ロンダリング(数年かけて無名の競売にかけ続け来歴づくりをして盗品であることを隠す)してから画商やコレクターに売る
⑦買い戻し金や報奨金が目当て→盗んだ絵を楯にとって持ち主や保険会社と取引をし、金を得ようとする
⑧政治的理由→テロリストや革命家が著名な芸術家の有名な絵を盗み、政治的主張を通したり交渉を有利にするための切り札として利用する
●悪徳コレクター日本人説は1980年代のバブル期に海外で絵を買いあさった日本人に対する反感から生まれた。このイメージは、87年、フランスで盗難に遭ったコローの絵画5点が日本人の仲介者(前科あり)をとおして日本で売られていた事件(犯人はフランス人窃盗団で、86年に有楽町で現金輸送車から3億円を強奪する犯罪も犯している)によって定着した。しかし購入者は悪徳コレクターではなく、盗品と知らずに購入した「善意の購入者」で、最終的には所有権を放棄もしくはフランス政府に絵を寄贈。●日本の民法は買い手を保護する立場(動産の即時取得の原則)をとっているため、盗品であってもそれと知らずに購入した瞬間から占有者の合法的な所有物となり、2年経てば善意の所有者は被害者に作品を返還する義務が消滅する。返還請求に対しても弁償金を請求できる。よって盗品を購入することによる買い手のリスクが海外よりも低いため、暴力団がからんだ美術品の盗品市場が存在するというイメージが海外で流布する結果となったという。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: スパイス(音楽・美術・漫画・絵本)
感想投稿日 : 2014年6月17日
読了日 : 2014年6月15日
本棚登録日 : 2013年6月29日

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