この本は痛いところを突いてくる。
半分まで読んでもどこにも幸せが見えてこなくて、宗助が御米を大事にしているのが分かるけど、2人の生活はとても寂しく感じ、外界から切り離されたみたいな、世捨て人みたいな、不思議な孤独を感じるのは何故かと思っていたが、2人で罪を背負ったのだと後半で納得した。直接の言葉を使わずに2人の生活の空気感がどうしてこうも表現できるのだろう。
門のところの記述は誰もが通る道なのかもしれない。不幸な人というが、幸福なだけの人も少ないはずだ。
自分で切り開けない人もいる、でも流れに身を任せるという方法もあると教えてくれているような終わり方だと受け取った。答えを出せないことも多いが、すべてを窮屈にして思いつめることもないと思えた。
寒い冬から春になるその時期の暖かくゆるんでゆく様を、家庭の状況に重ねてあると感じた。そこで宗助がじきまた冬になると答え、2人の罪はなくならないことを思い出させる。
けれども良い時もあれば悪い時もあり、四季が巡るのと同じように物事も巡るということ、著者は言いたいのではないだろうかとふと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2017年8月29日
- 読了日 : 2017年8月29日
- 本棚登録日 : 2017年8月5日
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