希望荘

著者 :
  • 小学館 (2016年6月20日発売)
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杉村三郎シリーズ第4弾、再読。
オチを覚えている、途中まで覚えている、など記憶がスカスカ。己の脳細胞の死滅にゲンナリしつつも、新鮮さを失わずに読めたのだから良しとするか。

○聖域:僅かな年金さえも宗教?にはまった娘に搾取され、身を隠す老女が、自殺を仄かして失踪する。暫く後、身綺麗に着飾ったその老女らしき人物を、元同じアパートの住人が見かける。果たしてその老女はあの老女なのか…。

○希望荘:長いこと生き別れになっていた父。実直で優しい父が亡くなる前に話した過去の事件。父は本当に罪を犯していたのだろうか…。

○砂男:杉村三郎が探偵事務所を構える前、暫く実家で過ごしていた時に関わった事件。これを機に探偵事務所を開業する決心をする。宮部さんの過去の作品「火車」を思い起こさせる。

○二重身(ドッペルゲンガー):東北の大震災の前日に東北地方へと向かい、消息を絶った財産家でもある雑貨店のオーナー。彼は出掛ける前にシングルマザーの女性に求婚をしようとしていた。手掛かりが少ない中、杉村三郎が彼の消息を掴もうと苦闘する。

杉村三郎が財産家の妻と離婚し、探偵事務所を始めるまでの経緯と、初期の依頼について描かれている。
離婚については気の毒だけれど、彼が本来の自分を取り戻すことができたようで、読者としては良かったような気がしている。

どの話も悪意に満ちた物からくる事件ではなく、日常に潜む人の欲、自己中心的な考えがそれを構成するピースとして組み合わさっているように描かれている。
根底にはやはり、格差社会に対する作者の視点があると思う。また、そういう時代を生きる我々への問い掛けでもあろう。2020.1.4

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 913日本の小説
感想投稿日 : 2020年1月4日
読了日 : 2020年1月4日
本棚登録日 : 2018年1月20日

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