グレート・ギャツビー(新潮文庫)

  • 新潮社 (1974年7月2日発売)
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本棚登録 : 225
感想 : 26
3

退屈な小説だった。もし私がアメリカ人だったら郷愁や寂寥感を肌感覚で実感できたのかも知れんが。
何も持たない男が一人の女の愛を得るためにどんな手でも使って成り上がる、という価値観がもう私には理解できなくなっているのだろう…。怖っ、みたいな。
でも主人公の感覚や心情描写にはちょっと驚くほど共感できた。「終わりの始まり」というものへの感慨が自分にもあるからかな?
あとギャツビーを語り手とするのではなく観測者の視点から描写するのは今のキャラクター消費のやり方にも通じるものがあるように思う。ギャツビーを推してるニックを見てる俺(読者)。みたいなコンテンツとして成立させられなくもない距離感というか。推しと自分の関係をつい思い起こしてしまった。

ギャツビーの描写には色々怪しい点があるように思えてならない。急に消えたり現れたり、本当に存在してる?亡霊だったりしない?と疑いながら読んでいた。そもそもあいつ偽名だしな。虚構に生きる刹那い人物だからギャツビーを「解釈」しようとすることは雲を掴むようなもの。彼の存在が主人公以外の人物に何も残さなかったと言わしめているのがかなしい。そんなことってある…?
とは言えアメリカン・ドリームの地縛霊みたいな解釈もされているから、アメリカンマインドに残る何かきらめく概念なんやろうな。一つの時代を象徴に託して有終の美を体現できる作品はロマンがあるね、超てんちゃん!
この作品については先人達が散々考察し尽くしてきただろうし、今の私にわかるのは、この文学がアメリカの地に産まれたことに大きな意義があるということ、そして100年近く経った今も色褪せない繊細で映像的な描写が素晴らしいということぐらいだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年3月18日
読了日 : 2023年3月18日
本棚登録日 : 2023年3月11日

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