昭和の名将と愚将 (文春新書 618)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年2月18日発売)
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感想 : 35
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先日お亡くなりになった半藤一利氏と保阪正康氏の対談集である。
保阪氏は「名将の条件」を、「理知的であること」「原則論に振り回されないこと」と、陸軍士官学校をはじめとする陸軍教育の弊害をあげて話す。半藤氏は、「決断を下せること」「目的を部下に明確に伝えられること」「情報を直につかむこと」「過去の成功体験にとらわれぬこと」「現場に身を置くこと」「部下に最善をつとめさせること」としている。お気づきのように、まさにリーダー論である。
おなじ陸軍士官学校でも、アメリカは違うようだ。『ウエストポイント流 最強の指導力』では、危機に立ち向かうリーダーの三原則として、「リーダーは誰でも危機に直面する」「リーダーは誰も攻撃的でなくてはならない」「リーダーは誰でも自分の組織を勝利に導くため、全力を傾けなくてはならい」となる。半藤・保阪氏の名将論には、「勝つ」という視点がないが、ウエストポイント流ででは、「勝つ」ために強くなることを学び、「強い」ために恐怖を克服し、人格を陶冶し、組織に血を通わせ、失敗から学ぶことを知る。勝たなければ名将とはいわない。負けた武将への判官びいきがある我が国との違いかもしれない。
ちなみに「愚将」の条件は、「責任をとらないこと」らしい。毎日ニュースで愚将たちを見ていることになる。
あの戦争を率いていた軍事官僚たちの生死から学ぶことはおおい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 昭和という時代
感想投稿日 : 2021年2月25日
読了日 : 2021年2月25日
本棚登録日 : 2021年2月25日

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