ダレカガナカニイル (新潮ミステリー倶楽部)

著者 :
  • 新潮社 (1992年1月1日発売)
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本棚登録 : 93
感想 : 16
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何十年ぶりかの再読。人の記憶はこんなにもあやふやなものか、と驚いた。記憶にあった物語の結末とまるで違っていたからだ。いやはや本当に驚いた。ダレカガイツノマニカカキナオシテいませんか?これ。僕の中の物語は、吉野桃紅の意識が葉山晶子へ飛び込んで、それに突き飛ばされた拍子に晶子の意識が西岡悟郎の中に入ってしまった、という設定だったのに。そして最後は、それが明らかになりながらも晶子の意識が徐々に消えていくという悲しくも暖かなお話だったはずなのに。
井上夢人さんの小説は、本当に小説的な小説だといつも感じている。この本もまさにそう。殺伐とした展開の部分はあまり好きではないけれど、発想と丁寧な表現が、ああ今小説を読んでいるなあ、と感じさせてくれる。大好きです。
もしもできるなら、僕の記憶の中のダレカガナカニイルも書いてくれないかなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月27日
読了日 : 2023年11月27日
本棚登録日 : 2023年11月27日

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