子どもに本を買ってあげる前に読む本

著者 :
  • ポプラ社 (2008年12月8日発売)
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本棚登録 : 208
感想 : 53

2022.11.20市立図書館
図書館の本棚をなんとなくながめていて目についたタイトル。子どもに本をすすめる前に大人が知っておいたほうがいいことがまとまっている。本の探偵赤木かん子さんの本ということから内容はなんとなく想像がつくけれどとりあえず借りて読む。

おしゃべりスタイルなのでどんどん読める(飛躍や省略を脳内で補って読まなければならない箇所も少なからずあるけれど…あと句点のつけかたが独特で、ちょっと校正が甘い気もする)。
本=物語(フィクション)という思い込みの罪(空想系vsリアル系)、本の語彙(道具立て)や翻訳(文体)、挿絵や判型にも賞味期限があるんだというあたりは著者のかねてからの持論(絵本がわりと長持ちなのは、こどもはフォントや字組をみないで絵だけながめるものだからかな)。
同じ「ファンタジー」でも、ゲド戦記で育った旧世代、十二国記のYA(過渡期)世代、ハリポタ世代、さらに新しい世代に分かれていて、別の世代の本はなかなか読めないものだ(特に出版がデジタル化してからこっち、版組の古いものを読めというのは難しい)という見立てになるほどと思った。1998,9年あたりに森絵都のようなYA文学がそれまでのコロボックルシリーズやズッコケ三人組シリーズにとってかわり、ハリー・ポッター誕生からの怒涛のYA&ファンタジーブームはこの本の出た2008年に終わって、この年の小6と中1には文化プレートの切れ目があるようだと言っている。

ちなみに長女はこのとき6歳、そのあと小学生でハリポタに見事にハマったが、ナルニアやエンデなどは見向きもしなかった。いわれてみれば、長女はめちゃくちゃ本好きだけれど私のおすすめの岩波少年文庫や翻訳作品はあんまりよんでもらえず、それはフォントとか字組が好みではなかったからと言っていたなあと思い出した。そして児童文庫は早々と卒業して一般向けの角川文庫(フォントや字組が好みと言ってた)なんかをばんばん読み始めたっけ。

わたしはデジタル化前だったから、親がこどものときに読んだふるーい本(講談社少年少女世界文学全集とか伝記全集とか)もどんどん読めたけど、それは運がよかっただけというわけだろう。高校生以降に遅まきながら岩波少年文庫やゲド戦記を読破していて、氷室冴子はなんとかであったけど川原泉や佐々木倫子に出会いそびれたまま大人になってしまったという、同世代の中でも旧文化どっぷりの人だと思う。新し目のファンタジー(十二国記やハリポタ)にはなぜか入り込めず、でも今になってSFにはまったりしている。

ただ、「ファンタジー」の内実の時代による変遷は確かに一理あるが、それだけではない気もする。
他にも、そこまで言い切っちゃっていいのか、ちょっと眉唾かなと思ってしまう箇所も無くはないけど、なにしろ新旧のあらゆる読みものからマンガまで手広く読んでいてそういう作品が登場した時代背景やその作品世界の意味をわかりやすく解説できるのはすごい。「ドラゴンボール」(←タイトルしか知らない)のあらすじとすごさをまとめたコラムには脱帽。司書というからには自分の好き嫌い抜きでなんでも知ってないといけないのだなと今更ながら舌を巻く。2008年以降をどういうふうに見ているのか、続きが読める本もあったら読みたい。
2008年時点で書き手不足だった低学年中学年向きはけっきょくゾロリが一頭地を抜いた状態のまま、あとにおしり探偵などが続いた感じかな?
学校図書館に関しては、すくなくとも当地では、片手間の司書教諭ではなくちゃんと専任の司書さんが配置されるようになってずいぶんよくなったけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2022年11月20日
読了日 : 2022年11月25日
本棚登録日 : 2022年11月20日

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