日輪の遺産 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1997年7月14日発売)
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感想 : 312
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帝国陸軍がマッカーサーから奪い、終戦直前に隠した財宝。その財宝に関わった人々とこれから関わろうとする人達の話です。てっきり宝探し系の話かと思いきや…、いい意味で予想を裏切られました。

競馬場で出会った老人から手帳を遺された丹羽は不動産会社の経営がうまくいっておらず、その老人真柴の話を疑いつつ、一縷の望みに賭けたい気持ちもあり、同じように真柴から手帳を託されていた地域のボランティアをしている海老沢と共に財宝について調べようとします。
真柴が住んでいた家の大家、金原も財宝について知っているようで、宝探しは三つ巴の様相。
真柴の手帳には財宝を隠した経緯が記されていました。財宝を隠す作業をしていた戦時中、そして財宝探しに色めき立つ現代、話が交互に展開していくにつれ、読者に次第に事情が明かされていきます。あっと驚く繋がりが分かった時、静かな感動がありました。

人々が宝に振り回されたというよりは戦争に人生を狂わされた気がして、理不尽だなぁと思いました。そして戦争にはきっと私の知らない側面があり、それについて私たちは知らないといけないのではないかと思いました。
宝を隠す作業をし、口封じに殺される筈だった女学生達は終戦と共に自ら命を絶ち、宝を隠す実行部隊の指揮をとっていた真柴は戦後もその秘密を抱えて生きていかねばなりませんでした。真柴と同じ秘密を知る小泉中尉は戦後の国民が飢えないように、マッカーサーと取引をしようとします。マッカーサーはその取引に応じず自力で自分の財宝を取り戻そうとしますが、宝があった場所には他のものもあって…。

 うまく纏められないのですが、それぞれの生き様が強烈で(きっとそれは浅田氏の描き方によるのでしょうが)壮大で面白かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年5月29日
読了日 : 2018年5月9日
本棚登録日 : 2018年5月29日

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