人間臭い新撰組隊士が読める本。
総勢18人の視点をとっかえひっかえしつつ、幕末を駆け抜けて行った新撰組を多角度から描き出します。
同じ人物・物事を観るときも、違う複数の人々の視点から肯定的にも否定的にも観ることができて面白かったです。
新撰組というと、なにかと美化されたり英雄視されたりしがちですが、彼らとて醜い部分を多分に持った人間たちであり、微妙な思想の違いも持っている。しかも時代は激動の幕末。
そんな時代の中、居場所を求めて集まった若者たちの悩みや葛藤、交錯する思惑が巧妙に書かれています(まあそれでも多分に美化されているわけですが)。
中でも印象的だったのが、芹沢鴨。
豪胆で荒々しい性格の裏には、他人の目が気になって仕方ないという小心者の面が隠れていた、というのには、ほぅ、と思ってしまいました。
あとは、沖田と斎藤、剣豪で共通するが性格はまったく似ていない二人が、「土方は間違わない」という部分で一致していることも印象的でした。思想がない代わりに、人を色眼鏡なく見分けることができるのですね。
そして、誰よりも悪しざまに言われるのは、まあ、言わずもがなの土方。当然と言えば当然か。
でも、ひたすら不器用で素直じゃないところや、特に古株のメンバーはそれも踏まえて、口では色々言うけどちゃんと評価しているんだよ、という風に書かれていたのが良かったです。面と向かって言わなくても、信頼が成り立っているというのが素敵。
あとは、人のことは信頼するのに、自分が信頼されてるってことは考えてない、といったことを言われていたところも。
後半は時勢を書くことに追われて、人物の心理描写が疎かになるのが惜しいところです。
著者さんは、新撰組の日陰にある人々のことも書いておられるようなので、そちらもぜひ読んでみようと思います。
- 感想投稿日 : 2011年10月11日
- 読了日 : 2011年10月10日
- 本棚登録日 : 2011年10月11日
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