現代欧州を中心に各国の個別事例に紙幅を割き、巻末で一定の共通点を見出だすという手法を取っている。筆者の専門が欧州政治史と比較政治である故か。書名から予想した内容とはやや異なったが、頭には入りやすい。
ラテンアメリカと欧州のポピュリズムの違いについて、前者は「解放」志向の左派・(攻撃対象たる現在の)受益層は富裕層・「社会経済的な改革」志向。後者は「抑圧」型の右派・受益層は貧困層や移民・「政治文化的な批判」。筆者はこうざっくり分類している。
そして、現代欧州を念頭に置いてか、以下の3つの論点を指摘している。特に第一の点について、自分が漠然と感じていたことが頭の中で明確に整理された。
1)「リベラル」「デモクラシー」との親和性。極右から出発した政党でもそうでなくても、先進民主主義国では当然の前提となっているこれらの価値を承認し利用もしている、ということである。確かに、「男女平等や個人の自由を認めないイスラム」への批判、シャルリー・エブド襲撃は「言論の自由への挑戦」との主張に対しては、(イスラム教に造詣の深い人なら違うのだろうが)一瞬言葉に詰まる。そのためこれらの主張は今や強い説得力を持つようになっている、現代デモクラシーの論理をもってポピュリズムに対抗することは困難、と筆者は述べる。
2)一過性のものではなく、ある種の「持続性」を持った存在。カリスマ的リーダーが去った後でも有権者の支持を持続的に集めているという。
3)既成政党に改革を促し、デモクラシーを再活性化させるという「効果」。このように、ポピュリズムが現代政治に与えるプラスの側面も筆者は指摘している。
- 感想投稿日 : 2018年2月28日
- 読了日 : 2018年2月28日
- 本棚登録日 : 2018年2月28日
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