銃 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社 (2012年7月5日発売)
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本棚登録 : 4078
感想 : 340

銃に魅力を感じるなんてこと、自分では到底考えられないのですが、文章にどんどん引き込まれて、読んでいる私も銃の魅力に取り憑かれてしまいました。そして、後半は銃に支配され、主人公は落ちて行ってしまうのですが、この追い詰められている描写が心臓の鼓動が伝わってくるようで、本当にハラハラします。主人公の冷静で論理的な思考と、それとは反対の突発的な行動により、精神がぐらぐらと揺れ、銃に追い詰められていく、緻密な描写が本当にすごいです。
計画した場所で撃とう撃とうとするシーンで極限にまで追い詰められた主人公は、死から生を感じていたように思います。このシーンがあってよかったです。最後は、ああなってしまいますが、主人公はそこから上がっていく希望を持つ力があると思うことができます。最後の弾はそのまま入らないで欲しいな。

全ては主人公の勝手な思い込みです。同じように、現実の悩みも案外、自分が勝手に作り出しているものなのかもな、とも思いました。特に10代の頃とか。自分で自分に制限をかけて、追い詰める。このどうしようもないものが、人間らしさであり、その人間が愛らしくも感じます。

毎度の作者のあとがきが好きです。
「共に生きましょう」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年5月6日
読了日 : 2015年5月5日
本棚登録日 : 2015年5月5日

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