暗い宿 (角川文庫 あ 26-6)

  • KADOKAWA (2003年10月25日発売)
3.47
  • (113)
  • (277)
  • (594)
  • (17)
  • (6)
本棚登録 : 2579
感想 : 215
4

宿をテーマにした4つの短編推理小説が収録されている。
火村シリーズは話の中で私であるアリスを通し、丁寧に状況説明がされている印象だったが、こちらの短編はどれも余韻を残す終わり方となっている。
場面展開がぎゅっと凝縮されているので、各話一気に読むことをお勧めする。話についていけるよう、真剣に読むので、物語に一気に入り込める。短編でもこんなに作品の世界観にひたれることができるのだと実感した。

暗い宿
 田舎の静かな夜、真っ暗な部屋、静まりかえった部屋にかすかに聞こえて来る、土を掘るような音。情景がありありと浮かんで、ホラー小説を読んでいるのかと錯覚してしまう。自分が体験したかのように引き込まれた作品。

ホテル・ラフレシア
 夢のようなホテルで起こる事件。ホテルカリフォルニアの歌詞とともに、フワフワとした雰囲気の中、気づいたらそこに囚われているのではないか。幻想的なのか不気味なのか、終わりもまた夢のよう。

異形の客
 正統派の本格推理小説という感じ。事件が起こったのに、旅館が発する静かな空気のギャップが印象的。あとアリスが美味しくごはんを食べた様子がいやに心に残った。

201号室の災厄
 現在進行形で起こる事件。ほぼ全てホテルの一室での場面のみなのに事件の真相を読み解き、状況判断をした火村のキレに脱帽。他の三編とは違う終わり方。でもこれもミステリー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2020年6月9日
読了日 : 2020年6月8日
本棚登録日 : 2020年6月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする