目にしたくない事実というものはある。どうしようもない人間もいる。言い出したらきりがなく、それらからどうやってわが身を避けるかが問題なのだ。避けかたは人それぞれなのだろう。カールは、人を殺すことで解決し、今度もまた人を殺すことで解決することを決断する。
一度目は目を逸らしたい事実から自らを守るため。二度目は愛おしい友人のために。
カールの話し方を、少年は「エンジンの唸り声のようで安心する」と言う。それまで私は、カールの独特の話し方を聞き取りにくいと、不思議な話しかたをするなあ、と感じていたのだか、少年のその台詞で、印象が大分変わった。知的障害をもつ犯罪者という先入観、そういったバックヤードによって、視界をにごらされていたのだと感じた。
あまりにも、カールがまっすぐすぎる。少年のほうが、大人びている。むしろ知略的だと感ずるほど。しかしカールが自身の父親に会いにいく場面はとても感銘した。殺してやろうかと思ったが、何もしなくてもあんたはその椅子でもう直ぐ死ぬんだ、と言い残して去っていくカールは、大人のようでもあるし、老人のようでも、子供のようでもある。
でもこれはハッピーエンド、ではない、と私は思う。
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- 感想投稿日 : 2010年9月19日
- 本棚登録日 : 2010年9月19日
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