重力ピエロ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年6月28日発売)
3.78
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本棚登録 : 55425
感想 : 4257
5

敢えて☆5つ。

理由は、「救い」のあるラストにしてくれているから。

起こり得るが、あり得ない条件の重ね方。

28年前の事件に端を発し、

・身籠もった子を生むという夫婦の決断
・事件が周囲や生まれた本人にまで知られていること
・犯人が名を変え、この街に舞い戻ってきていて、それを被害者家族が知るようになること

この3つが重なり、ラストへと導かれていく。

自分の「生」そのものに向き合い続けなければいけない”春”の心情を考えると、いたたまれない気持ちになった。

この作品を気に入ったのは、

小説として描写される以前のこの家族の様子が、ちょっとのエピソードで浮かび上がってくる点と、

語り手である兄”泉水”の、一連の落書き・放火事件の中での推理の、真実を避けているかのような『もたつき』。

それ自体が、弟”春”に対する深い、家族としての情愛を示しているように思われるから。

このような受け取り方ができるのは、僕がこの事件のような経験や苦しみを味わったことがないから。

本作は虚構の世界であるが、
現実に被害に遭う方を減らすためにも、厳罰化や教育、再犯防止のシステムなどの取り組みが必要だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月28日
読了日 : 2022年5月28日
本棚登録日 : 2022年5月28日

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コメント 4件

ダイちゃんさんのコメント
2022/06/10

shukawabestさん、今晩は。ダイです。重力ピエロを読まれたのですね。shukawabestさんの内容の捉え方、参考になります。こういう話は、虚構の世界であって欲しいと思います。

shukawabestさんのコメント
2022/06/10

ダイちゃんさん、コメント、ありがとうございます。ダイちゃんさんの本棚で見つけて、「重そうだけど読んでおこう」と手に取りました。レビューを書くのもかなりエネルギーがいりました。本当に小説の中だけであってほしいと思います。

ダイちゃんさんのコメント
2022/06/10

返信コメントして頂き、ありがとうございました。

shukawabestさんのコメント
2022/06/10

こちらこそ、ダイちゃんさんのレビューでいい機会を与えていただき、ありがとうございます。

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