凍 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2008年10月28日発売)
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本棚登録 : 2752
感想 : 344
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過去に山関連では植村直己「青春を山に賭けて」、著者関連では「深夜特急」を読んだ状態で読了。「青春を山に賭けて」では植村直己のとんでもない情熱と傾注力に触れて、深夜特急では不思議な旅を独特な文章で魅せられた。これら(題材×文章力)が掛け合わさるとどうなるかと気になりつつ読み終えた。

読み終えた率直な感想は、やっぱりこれが史実なのかと驚きを隠せない。幼少期からの過ごし方、今回の挑戦までの動機、山野井と長尾が結ばれた経緯などどれをとっても不思議さと想像できないことの連発だった。ただどこの点においても決意と達成しようとする情熱はすごかった。植村直己と同様、アクティビティであると同時に命をかけてやらないといけない山登りの性質かもしれない。
一番驚いたのは長尾の身体についてかもしれなかったが・・日本一優れた女性クライマーといっても過言ではないかも知れない。ディスアドバンテージを人よりも持ちつつも肉体面・精神面で勝てる人はいないのではないだろうか。

ただ、本作はすこしばかりの物足りなさを感じた。前述の「深夜特急」で綴られた文体がありながらも、万人受けするような読みやすさ重視の文章になっていた気がする。そして、臨場感やその情景を感じられない場面が多々あった。これはおそらく、著者の沢木氏の史実ではないからだろう。

ただ逆に言うと、この本はどのように書かれたのだろうか。ノンフィクション作家は基本的に自身の経験を書くものだと思ったが他人の物も書くのかと知らされた意味で、その概念が崩されたということで本作は良かった。それにしてもどのように書いたのだろうか。本作を書くことになったきっかけ、どのように書いたかが気になる。

山野井は本作の話の後も登山を続けているよう。未踏峰ルートも登ってるということで真似できないし尊敬する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E9%87%8E%E4%BA%95%E6%B3%B0%E5%8F%B2

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 物語
感想投稿日 : 2020年1月11日
読了日 : 2020年1月7日
本棚登録日 : 2019年12月26日

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