これは私的な感想のようなもので、この本とはあまり関係がないかもしれない。
本には、読むべきタイミングというものがある。
ぼくがこの本をここに登録したのは、どうやら2年前のことであり、そのころから「読まなくては」という思いがあったが、しかし読まずにいた本がこの『ノルウェイの森』である。
そういうたぐいの本は、いくつかある。
奇妙なもので、そういう本たちは、どこかで「読みなさい」と語りかけてくるタイミングがある。
今回は、ぼくの先生が「高校生時代にクラスで流行ったのよ。ちょっとエッチで、そのときは刺激的だったわ」というようなことを言いながら、勧めてくれた。
ただし、先生によると「最近読んだら、当時ほど感慨はなかったなぁ」ということだったので「ぼくの年齢ならどうですか」と聞くと「あなたなら、十分読めるでしょう」という答えをもらった。
読後、まぁ、その人のいうことはわかった。
主人公は20歳くらいだし、いま、先生は40代、ぼくは20代だ。
たしかにこの本は、ぼくにさまざまな感傷を与えた。
どうせぼくのような、陰気なやつは、だいたい同じことを思うだろうから、そのへんの感想は、ほかの陰気なやつに任せる。
ただし、主人公がこんなにもヤリチンな文学作品というのは、ほかの文豪、たとえば太宰や三島が好きなひとたちは、どう思うのだろうか……w
ぼくはこの一点について、異議を唱えたい気持ちはあるけれど、それでもこれが文学作品としてなりたっていることがすごいと思う。
それから、先生の言うような「ちょっとエッチな」部分は、べつにたいしたことはなかった。文学作品ならこのくらいの性描写はあるのかな、と思う。ぼくは谷崎とか好きな奴だし、そのことは先生には伝えていなかった。(そもそも先生は谷崎など読まないだろうから、伝えたところでどういう意味の発言かなど理解できないのだ)
先生には、まだこの感想を伝えていないし、この本を読んだということも言っていない。
本というのは、その人の人生や、価値観、考え方を構成する、小学生的なことばで言えば『心の栄養』だ。
この感想を先生と共有することで、また、先生の仔細な感想をぼくが聞くことで、先生の、未知な『心の栄養』が引き出せれば面白い。
それが、ぼくの『心の栄養』になっていくという現象は、なんだか素敵なことのように思えるのだ。
- 感想投稿日 : 2016年9月22日
- 読了日 : 2016年9月19日
- 本棚登録日 : 2013年4月28日
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