海辺のカフカ〈下〉

著者 :
  • 新潮社 (2002年9月12日発売)
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ナカタさんと星野青年によって入り口の石は開けられた。
甲村図書館の館長、佐伯さんとナカタさんは出会い、佐伯さんは死ぬ。ナカタさんも力を使い切ったように死ぬ。ずっと半分死んでいた二人はやっと死ぬことができた、ともいえるだろう。
入り口の石は星野青年によって閉じられた。

カフカ少年は山奥で不思議な場所にたどり着く。生と死の世界のあいだのような場所。そこで15歳の佐伯さんと出会い、現在の(亡くなったばかりの)佐伯さんとも再会する。彼は元の世界に戻る。入り口が閉まってしまう前に。

ナカタさんの死体を通して現れた”わるいもの”は星野青年によって成敗された。カフカ少年は図書館に戻り、油絵「海辺のカフカ」を受け取り、中野区野方へと帰っていく。

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不思議な物語だった。たくさんの固有名詞がでてきた。それ以上のメタファー(暗喩)もでてきた。
田村カフカくんとナカタさんを導いていたものの正体はわからなかった。
何人かの死があった。”ある意味では死と友だちになり、腹をわって話をする”ような物語だったような気がする。

田村カフカくんと佐伯さんが本当に母子だったのかはわからない。何をもって、人はタフになれるのかもわからない。
死んでいった人のことを覚えていてくれる人がいる。それが死者と繋がっていられる方法だということはわかった。
田村カフカくんは佐伯さんを忘れないだろうし、星野青年はナカタさんを忘れないだろう。つまりきっとそういうことだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 村上春樹
感想投稿日 : 2022年7月2日
読了日 : 2022年6月30日
本棚登録日 : 2022年6月30日

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