ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

著者 :
  • 中央公論新社 (2009年11月25日発売)
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感想 : 228
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書店やネットでの評判を見て購入。いやぁ、評判通り。実に良い本でした。
異世界転生モノかよ!と思わせる神展開を、まさか50年近く前に日本人が成し遂げていたとは…。本著を見つけ出し、素敵なフレーズをつけてプロデュースしてくださった方に感謝したい気持ちです。
結構昔に「ホテル・ルワンダ」を渋谷のちっちゃい映画館で並んで見ましたが、これは大虐殺よりずっと前の1960年代の話。本著内での発展の後に大虐殺があると思うと切なさも感じましたが…それでも、この発展に向けた努力はルワンダ大衆の幸せに寄与していたはずです。

さて、日本のGNPが世界第2位となったのが1968年。その少し前にルワンダの中央銀行総裁として赴任したのが著者で、ここから国の実情を把握し、ルワンダ大衆の福祉に貢献するために次々と手を打って行った訳です。
どーにも中央銀行の職分を超えてるところもありそうですが、本著内の展開のストーリー性と先を見越した一手の打ち方は、日銀マンここにあり!という感じで、読んでいてとても痛快です。
ルワンダの産業振興のため、参入障壁を下げて自国民に商売をさせる、というくだりや、外国人商人の間の諍いを上手く使うくだりは、教科書だけの表層的な理解ではない、人間が織り成す経済をどう動かしていくかに関する深い洞察がそこにはあったのかなと思います。

本著を読んで感じたこととして、ゼネラリストは捨てたモンじゃないなと。
著者は金融のスペシャリストながら、結果的には「国内のバス交通も整備した方が良いよね」的なコメントをしたり、専門じゃないけど正しいコトをしていった訳ですが、訊かれた時に「いやそれ僕の仕事じゃないんで」と返すのかどうかって、大事ですよね。
専門分野は人それぞれあっても良いけど、常に一般論としてでも物事を考えていて、常にバッターボックスに立っている「つもり」の気概というのは必要だなと感じました。

あと、開発援助の在り方についても、考えさせられました。寄附しておしまい、ってのは本当に有効なんでしょうか。
前に「テクノロジーは貧困を救わない」を読んだ時にも感じたのですが、結局は人を救うのは人な訳で。
(ひと昔前の?)流行りのマイクロファイナンスだって、あれは前向きな人の意思(と資金)を上手く繋げたからワークしたのだから、そんな趣旨の仕組みや、それを手伝う人なのか、せっかくなら死に金よりも人を幸せにする営みが重要なのではと感じました。(まぁ、どっちにしろお金は要りますが)

ちなみに、著者の「傲慢頑固無能」等、人をけなす(著者からしたら、ありのままに描写しただけなんでしょうが)文言がなかなかキレてました。さすが海軍軍人、なんでしょうか。

少し金融絡みに親しみがある方がより楽しめるとは思いますが、個人的には文句なしのエキサイティングな良著でした。
将来、異世界に転生して経済を立て直す予定のある方はぜひ!(笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2021年4月21日
読了日 : 2021年4月21日
本棚登録日 : 2021年4月14日

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