ネクサス(下) (ハヤカワ文庫 SF ナ 6-2)

  • 早川書房 (2017年9月7日発売)
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感想 : 8
4

2040年、能力を拡張されたトランスヒューマンが世の中に現れ、根本的に異なるポストヒューマンももう次のステップとして見えている時代を舞台にしたSFスリラー。
解説によるとパラマウントが既に映画化権を取得しているそうで、確かに映像化されたら面白そうなストーリーです。
あと、本著は"Nexus","Crux,"Apex""の3部作の第1巻という位置づけなので、ネクサス上下巻を読み終えた段階では、スッキリ読み終えたという気持ちにはなれません。そして、続巻は未邦訳という(笑
※それでも、英語版であればKindleで800円も出せばすぐ手に入るので、まぁ凄い時代になったものです。。

本著のキーメッセージは、「45 一切衆生」の6ページに纏まっているとおり…
・仮に「言語能力(発話、読み書き)を習得するのに、一生かかる世界」があり、自分が短期学習法を知っていたら、それを世界に伝授するか?
⇒伝授する。
 言葉は、暴力や中傷、人殺しの武器の作り方の解説、ファシスト的な扇動に使われうるとしても、悪行より善行に使われることが多いはずだから。
ということで、最先端技術が国家の管理下にあって、「トランスヒューマンは人権保護の対象外」とされる本著内のアメリカに対して、主人公は明確に異なるスタンスを示した訳です。

下巻の舞台はタイですが、
・個人の自由(トランスヒューマン研究)を制限し始めた民主主義国家アメリカ
・研究自体は推進できる社会主義国家中国
・仏教精神で全ての人の幸せを追い求める(僧侶がいる)タイ
とコントラストがハッキリしていて(タイは国家官僚が出張る訳ではないですが)、著者のプロットの綺麗さを感じます。

ただ、一方で細かい展開は??となるものも。(本著は小説としては著者の処女作なので、あまりどういう言うものではない気もします。)
アメリカの当局の行動が特に良くわからなくて、例えば隠密ミッションで、部隊が大人数のタイの僧侶たちに囲まれた段階では撤退予定だったのに、写真を1枚撮られた瞬間に僧侶たちを麻酔弾で撃ち始める、となるのは何だかなぁと思ってしまいました。
敢えて当局を単純、残忍に描いているのかな。。

当然続きは気になるのですが、邦訳されないかなぁ…(笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2021年3月7日
読了日 : 2021年3月7日
本棚登録日 : 2021年3月2日

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