創作の極意と掟

著者 :
  • 講談社 (2014年2月26日発売)
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感想 : 81
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 “これは、作家としての遺言”

 『時をかける少女』『家族八景』等で知られる日本屈指の文豪、筒井康隆が送る正しき文の書き方作法。小説とはいかにして成り立つのか。自身の経験談も含め、多岐に渡る項目に分けて丁寧に語られる珠玉の指南書。


 ・凄み

 凄みがあってこその小説。それは、読み手と相容れないかもしれないという不安感が与えてくれるもの。不条理感をくすぐるような独特の感覚。作者自身から滲み出る唯一無二のその凄みを存分に示すこと。

 ・語尾

 「です、ます」なのか、あるいは「である、だろう」。文章を構築する上で、全く同じ語尾を繰り返さないことは重要。ここを疎かにしてしまえば、その文は一挙に陳腐な、子供の作文の様になってしまう。

 ・羅列

 名詞の羅列は状況を表現するポピュラーで効果的な描写法でありながら、一方で実験的な側面にも用いられる。人名の羅列のみで一篇の作品を書いたこともある筆者だから分かる、その苦労。取扱注意。


 以上の他にも「表題」「視点」「諧謔」など、読んでいると当然のようで、でも目から鱗の創作技術も。場合によっては実際の文章を引き合いに出して説明してくれるという、実に分かりやすい説明。最後を締めくくる愚痴交じりの作家としての不幸も面白い。全ての作者と読者、読んで損なし。


 そんな一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年2月29日
読了日 : 2016年2月29日
本棚登録日 : 2016年2月29日

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