そう、これこれ!
僕が読みたかった吉田篤弘は
まさにこんなん(笑)
世界の果てにある食堂と
ビートルズの『ホワイト・アルバム』をめぐる
無国籍風味な大人の童話集といった味わい。
夜の喧騒を一手に引き受ける「世界の果て食堂」。
入り口の青いガス燈と真っ白なテーブルクロス。
ゴンベンを擁するあらゆる領域に詳しい「ゴンベン先生」。
黒ビールに串焼きを食べながらの秘密の会合。
壁にドアノブだけを30個並べた「小さな冬の博物館」。
たった一作だけを発表して雲隠れしたイギリスの作家。
唯一ジョン・レノンを待たせたサンドイッチマンの伝説。
バディ・ホリー商會のシシリアン・ソルト。
ジャン・ギャバンによく似た海辺の漁師。
謎が謎を呼ぶ「閑人(ひまじん)カフェ」。
鞄の中でくたくたになった
サリンジャーの「フラニーとゾーイー」。
薄汚れたシナトラ食堂と老犬フール。
数億年分の時間が詰まった
空から落ちてきた星の欠片…。
いやはや、なんという心地よさ。
少しずつ少しずつ、
ささやかにリンクし共鳴し合う登場人物たちの妙。
何度となく読むたびに
毎回好きな話が変わっていくのもいい感じ(笑)
日本でも外国でもない「ここではないどこか」で起こる
シュールで奇妙で、
それでいて微笑ましい16+1のショートストーリー。
『白河夜船』のレビューで
吉本ばななの作品はストーリーがどうこうより、
ほとばしる切ない感性を楽しめばいいと書いたけど、
吉田篤弘の連作短編集で言うなら
一冊トータルとしてどうこう評価するのではなく、
読んだ人それぞれが
それぞれのお気に入りのストーリーを見つけて、
そのショートストーリーを
何度も何度も読み返すのがベストな楽しみ方だと思う。
(また吉田さんの短編は何度読み返しても、そのたびに心地良さが持続するところがスゴい!)
ということで僕のお気に入りのストーリーは、
一人旅を続ける女性カメラマンは
「親愛なる、夜ふかしの皆様…」で始まるラジオの声に導かれ、
「6月の月放送局」のある島を目指す…
『その静かな声』、
しわくちゃな白シャツがトレードマークの有名な作曲家と
同じアパートに住む少年とのひとときの触れ合いを描いた
『キリントン先生』、
「レインコート博物館」で働く仲良し三人組の活躍に
頬がゆるみっぱなしになった(笑)
『小さなFB』、
予告編専門の映画監督を夢見るちょっと変わった青年「ろくろく」が
村上春樹の「風の歌を聴け」の鼠とオーバーラップした、
ほろ苦くちょっと切ない青春ストーリー
『ろくろく』、
10歳の小学生が初体験する
ビートルズのレコードと焼きたてのピザの味。
お店で買ったピザが崩れないように
15秒おきに水平になってるか確かめまくる小学生二人が
ホンマ微笑ましくて笑えます!
『ピザを水平に持って帰った
日』、
かな~♪
詩的で寓話的なストーリー。
強烈に郷愁を誘う、
かつてそこにあった
懐かしくて切なくて美しい世界。
村上春樹の「カンガルー日和」同様に
いつでも読めるように鞄に入れて、
公園のベンチやカフェでまったり読むのにも最適だし、
自宅で英国風ティータイムを気取って(笑)
紅茶にビスケットをつまみながら
ゆるゆると読むのも
おそろしいくらい合いそう(笑)。
あっ、もちろんBGMには
ビートルズの
『ホワイト・アルバム』をお忘れなきよう(笑)♪
- 感想投稿日 : 2015年5月22日
- 読了日 : 2015年5月22日
- 本棚登録日 : 2015年5月22日
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