「風の歌を聴け」の続編に当たる作品らしいし、実際前作を読んでいないと意味がわからない。そのはずなのだが、全くの別物として読んだほうが、むしろ読みやすいかもしれないとも思う。
私は前作を「時がとまったみたい」と評したが、こちらは前作で吹いていたいたその風さえ、止まってしまったようだ。
季節は秋から冬へ。
軽やかな憂鬱は、凍える倦怠へ。
前作より抽象の世界へ入った本作では、「僕」も「鼠」も濃い霧の中で眠ってしまいそうに頼りない。
彼らは自分の探しているものがわからず、しかしそれが見つかるとも思っていないので、本気でそれを探そうとも思っていないのだと思う。
ただ偶然に出会ったもの、自分を柔らかく受け入れてくれた思い出だけを頼りに、彼らはすっぽりと霧に包まれている。
感傷的である。手探りである。「風」が吹いていない霧は、いつまでも晴れる気配がない。ぐっしょりと全てが濡れていく。
冒頭の「見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きだった」というフレーズが、私も病的に好きだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
どこかにあると、まだ信じてる
- 感想投稿日 : 2012年8月4日
- 読了日 : 2012年8月2日
- 本棚登録日 : 2012年8月2日
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コメント 2件
yuu1960さんのコメント
2012/08/09
抽斗さんのコメント
2012/08/12