終りに見た街 (小学館文庫 や 22-3)

著者 :
  • 小学館 (2013年6月6日発売)
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本棚登録 : 114
感想 : 20
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読んで良かった。他に戦争の小説をそんなに読んだわけではないが、なんだろう、地味なのにこれは凄い。

出征や特攻や原爆などの詳細な記述があるわけでも、涙を誘うような場面があるわけでもない。
それなのに、戦争の本当の怖さがヒシヒシと伝わってくる。

現代から突如昭和19年にタイムスリップしてしまう話。
と言っても、この本が書かれた元々の年は昭和56年である。
つまり、現代=昭和56年に47歳である主人公は昭和9年生まれなので、タイムスリップした先の戦時中の状況にも何とか対応できる。
それは著者の山田太一氏の年齢である。

著者のあとがきも、奥田英朗氏の解説もとても重要に思う。
著者は私の親世代。そして奥田英朗氏はおおよそ私世代。奥田氏のように私も親から戦争の体験談を聞かされた世代だ。
しかし親の話ではわからなかった《当時の日本の「空気」》(←奥田氏の解説による)をここまでよくわかるように伝えてくれた本書は本当に意義深い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・物語 (時代小説はこちら)
感想投稿日 : 2013年9月22日
読了日 : 2013年9月22日
本棚登録日 : 2013年9月22日

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